天寧寺
本通りを歩いていたら「天寧寺→」とあったので、行って見ることにした。なんてテキトーなんだ!
例によって路地を抜けて大通りに出ると、数段の階段と鉄路に遭遇する。ここは踏切ではなく、線路の下を通り抜けるタイプ。
天寧寺は五百羅漢さまたちがいらっしゃることで有名らしい。
それにしても、ホントに「線路の真下」なんだ!! なんかすごいぞ!
できれば電車が通り抜けるのを待って、くぐりたくなるような(汗)
はい、くぐってさらに段をあがる。
見上げればこんなふう。
横をみればこんなふう。
石柱をぬけると門が見える。
でもその途中にある石灯籠に「秋葉大権現」って書いているのが気になる。天狗の三尺坊と同一視される、火伏せに霊験あらたかな神が「秋葉大権現」。
ちょっと竜宮城みたいな門。
ひょうきんに威嚇する鬼瓦さん。バックには飛び跳ねる魚も。
門をくぐって真っ青な空を振り仰ぐと、ロープウェイがすれ違っていた。
昨日訪ねた千光寺の真上だなあ。ギリギリ。
ほんとに尾道は歩く街だね。
こんなにコンパクトに集まっているんだもの。
境内山手には貞治6年(1367)に足利義詮が建立した国重文の塔婆(海雲塔)がある。
本堂は禅宗らしからぬ装飾に溢れている。
紋付きの正面の装飾瓦。かわいい。
雲がリボンのよう。花の装飾も流麗。
丸瓦は梅紋。
檀家のひとたちが菊の花束を持って入って行かれるので、入れ違いに入ってみる。
ひろびろとした本堂にお参りして、朝の日差しが入って来るのをながめて、しばし、ぼおっとひとりで佇んでいた。まだ目が覚めてないのか?
居心地のいい本堂だった。
今度は、五百羅漢さまのいらっしゃるお堂に移る。
海の街らしく波の欄間があった。
羅漢さまも圧巻だけど、天井には格子絵も。
最後に、門の正面に見えた庫裏へも。
太い曲木の梁がかっこいい。
叩かれて腹のえぐれた魚板。魚の表情は、もちろん「ギョ」としている。
あっ、今頃気づいたけど、門の上は鐘楼になっているんだ!
撞木がいかにも「裏山で切り出しました」感があって、素敵。
尾道みなと館
夜・朝2食付きの宿泊プランなので、1Fのホテルに併設されたレストラン・パブ「クルセロ」にて晩ご飯。飲み物はウェルカム・ドリンクとしてサービスしていただき、オレンジジュースを所望した。
ソファにあったシマウマのクッションがかわいい♡ シマウマはこのホテルのマスコットなのだ。
軽めのイタリアン・ディナーで主食はパスタだけど、、メインディッシュはカキフライ3個か生牡蠣2個のどちらかを選べる。もちろん殻付き生牡蠣をセレクト。(すでに殻からは身をハズしてあるので)貝のすきまから引っぱりだして食べる。二粒とはいえ、大きくて落涙ものに美味しかった。身に余る贅沢。
でもやっぱり、カキフライも追加注文してしまった(汗) 軽めの夕食とはいえ、たべすぎ〜!
お風呂は部屋にはなくて、館内のラジウム温泉へ。事前に受付で容器をいただいて、シャンプーバーで好みのシャンプーとリンスを選んで容器に詰めてから、ゴー。
ラジウム温泉は、湯船の横に「入浴方法」が列挙してあるので、そのように。
効力があるぶん当りが強いので、長湯しないこと。たしかに3分くらいで充分だった。1日に続けざまに入らないこと(食前/食後とか)。それはもとよりしない。めんどくさいので。
充分にあたたまって疲れもすっかり取れたので、マッサージチェアの出番なし! なぜかちょっと損した気分も。
部屋に戻ってからは、テレビのニュースなどを見つつ数人の友達にお便りを書く。山頂の千光寺公園のお土産屋さんで買った「とぼけた猫写真の絵葉書」で。眠くなる限界まで書いてから、就寝。
翌日は朝風呂に入って、8時半には出かける予定。
朝ご飯は、ホワイトカレーがメイン!
バイキング方式だけど、カレーだけでおなかいっぱいだよ。ホテル側の作戦か!? まー、美味しかったけどね。
いいお天気になったし、さあ、どこから行こうかな?
海側を歩く。
せっかく海の近くに来たので、海のそばを歩くことにする。向こう岸にあるのは造船所。
あんなに近くに島があるなんて。まるで岬のような近さだ。
ゆったりと暮れて行く凪いだ海。
こんなところに、ひとり用の椅子? いえいえ船を陸につなぐ舫綱(もやいづな)をかける突起。カッコ付けの男が片足のせてポーズ取るところ。
こんなふうにね↓
そろそろ「とっぷりと暮れて」きたみたい。
海と反対側には学習塾。受験が済んだ今頃、先生方はつぶやいているかも。「おわった・・・なにもかも・・・」(@by 力石徹『あしたのジョー』より)
♪街のあかりちらちら あれは何をささやく♪
いかにも波止場。マリンな夕暮れ。
そんな場所で、素振りの練習をひとり黙々としている高校球児がいた。そのまま歩いて行くと、市役所にたどり着いた。お役所仕事というけれど、6時を回っても煌々と灯りがついている。時代は変わった。
そんな尾道市役所の門番は、
笑顔で市民を歓迎する神の使いだ。
玄関には狛犬、市役所裏は海。こんな市役所、ちょっとないかも。
手ぶれが激しくてすみません、尾道映画資料館です。もちろん、時間も時間なのでクローズド。
資料館の角の雨ざらしですが、たぶん映写機かと思われます。かっこいい!
このあと中の道に戻るだけなのに、想定外というか案の定というか、しばし迷子に。あれえ、この近くなのはわかるんだけどなあ。
彷徨っている間に、こんな看板猫を発見。パブ&ライブハウスのお店みたい。
人通りが少ない路上で、洋品店のお姉さんがご近所さんと立ち話をされているにに割って入り、ホテルの場所をきくと、ほんの目と鼻の先(汗) 話の腰を折っちゃったのに、とてもきさくで親切に明るく教えていただいた。「ほらあ、あのお風呂屋さんだった◯◯ちゃんの、最近新しくした場所だよ!」と、おしゃべり相手のご近所さんにも教えてあげてらした。そうです、去年オープンしたばっかりの、ラジウム温泉が売りのホテルです。
すでにチェックイン済みなので、そのまま2Fへ。アットホームなだけに、エレベーターは、なし。
でもできたばかりだから、きれい。
最近主流のカードではなく、キーを使って入るタイプの部屋。
シングルの部屋が満席で取れず、しかたなく2段ベッドのツインに。お子様には、大興奮をもって喜ばれそう。私が棚だと思っていたのは、階段だったのか・・・と、今頃気づく。そりゃあそうだよね。
ソファもごろ寝できるくらいゆったりだ。ホテルの自分の部屋で、わざわざソファでごろ寝はしないけどさ。
なんとマッサージチェアまで! これはうれしい!と思ったのに、一度も使うことなくチェックアウトしてしまった。その理由は次回に。
下山完了。
早咲きの桜が咲いていた。河津桜かな?
隣には蜜柑の木がいくつも実をぶら下げていた。
左近の桜、右近の橘みたい。
でもここは紫宸殿(南殿ともいう)前庭ではなく、単なる尾道の絶景が見下ろせる広場だ。春宵ののどかでロマンチックな気配は、おのずと恋人たちを引き寄せるみたいだ。
絶景を眺めるベンチは、恋人たちの憩いのスペースになってしまったので、
あれ? あんなところに蜜柑が?
ひよどりさんの格好のえさ場でもあったのね。
しかたがないので、ひよどりさんを撮ったついでに、ズームして写真をパチリ。
ふたたび石段にリターン。くだっていきます。
こんな看板があったり。
窓のある土壁と、竹を敷き詰めた壁面を持つお家を発見。
蔓の格子がついていて、磨りガラスが嵌められた窓。贅沢! 竹だって、りっぱなものみたい。太いし丈夫そうな風格がある。樋は高級な銅製らしく青く錆びている。
いい物件だなあ。
と、ついつい枚数を重ねてしまう。
さらに下って行くと、
こんな洋館も。
きゃー!ステンドグラスの入ったデザイン丸窓がお洒落♡ 玄関ドアの上の磨りガラスも高級感を醸し出す。
細い路地の塀があまりに立派なので、思わず誘われて迷い込む。
まるで城壁のような白壁! その下は石積み! 住んでいるのはお殿様ですか!?
突き当たりの立派な豪邸には、猫が佇んでいた。路地の細いつきあたりを曲がると、
お寺があった。
ここはどこ? あなたはだれ? と聞くまでもなく名乗ってくれた。
信行寺というらしい。
さあ、最後の坂をくだるぞ! この光景もずいぶん見たので慣れてはきたが、やはり目には興味深い。
なんだろうね、このワクワク感は。
踏切を渡って道路に出ると、こんな方々がお祀りされていた。このタイプのお地蔵様は初めて見た。
線路をつくるときに移動されたのだろうか。
高低差だらけの不思議なまち。「ブラタモリ」のロケをぜひおこなって欲しいところだ。
さすがに疲れてちょっと高級なコーヒーが飲みたくなったので、UCCみたいな雰囲気のあるカフェでひといき入れる。いい感じに暮れて来ましたよ。
千光寺
下山なので、裏口から千光寺に入ることになる。
岩と建物の間がギリギリ!!
大岩を屋根にして、お地蔵様がいらっしゃった。
そんな岩の上を通り過ぎるロープウェイ!! このロープウェイと神社仏閣の接近遭遇は、翌日も体験することになる。ちょっとばかりヒヤヒヤがはいったドキドキをね。尾道のあっと驚く凝縮ぶりには、意表を突かれる。
こんな感じに岩山の狭間に寺院、という感じなんですよ。
梵字岩。この曼荼羅図絵は徳川五代将軍綱吉公の帰依僧、東京の霊雲寺開基、浄厳大和尚当地へ御留錫の砌、書き遺されたものなりと云う。
円形の中に光明真言、大日如来真言の梵字が刻まれている「光明真言曼荼羅」だ。
しかし残念ながら、営業時間?を過ぎており、本堂には入れず(悲)
俗に「赤堂」と呼ばれる千光寺本堂の本尊千手観世音菩薩は、33年に一度御開帳の秘仏。俗に火伏せの観音とも称されている。
本堂から見る尾道の風景は絶景らしいので、少し外れた塀越しに眺める。なるほど、なるほど。
ふと下を見ると、やっとご当地マンホールにご対面! いや、消火栓だけど。駅前の道には全く見かけなかったので、「ここにはご当地デザインのマンホールがないの!?」と、少なからずショックを受けていたのだが、まさかこんな高台で発見するとは! これも尾道カルチャーショックだった。
そして千光寺での、もうひとつのカルチャーショックは・・・絵馬!!!
リラックマの顔が絵馬を下げる場所にわんさとあったのだ!!! リラックマ、こんなところで何をしている!といいたいのを、グッとこらえる。カップル用の縁結び絵馬にハート形とキューピッドは、宗派違いなのを含めても、まあ許そう。しかし、なんでリラックマなんだ!?
リラックマとなまはげコラボ・ストラップは嬉々として買うのに、なんで絵馬には違和感全開なのか。たぶん「神聖であるべき場所」に「商売」の匂いを感じるから興ざめしてしまうのだ。いや、それなりの創意工夫とサービス精神があれば、それもいいだろう。しかし何の芸もなく「廃れることなくかわいい」「盤石の人気者」というだけの理由でリラックマだ。
今調べてみたところ、千光寺では絵馬どころか「お守り」までリラックマデザインらしいのだ。おいおい!!
でもまあ、こんなかわいい裏絵馬に遭遇できたから、ゆるす。
12年後の年賀状デザインに使いたいようなニワトリの絵柄も発見した。しかもリラックマ絵馬ではない。この無欲な作者には、お願い事はなかったようで、それだけでも心が洗われる。この子は将来は大物になるであろう。
・・・しかしよ〜〜く見れば、木目の感じが他のと全然違う? もしかして、自作の絵馬だったのか? う〜〜ん、この裏にはびっしりお願い事が書いてあるのかも??
岩の隙間に建った千光寺とは、これでさようなら。しかし、建てるのは大変だったろうなあ。
本来の入口より出ていく。
千光寺の印象を訊かれたら、ほぼリラックマ(のイメージしか残っていない)、と答えるかもしれない(汗)
それもこれも「観光寺院」としての定めなのかもしれない。
禁止事項にあるけど、これだけ石碑があれば、拓本とりたい人はけっこういらしゃるかも。
というような印象ではあったが、
本堂には行けなかけど、道中で素敵な石仏さんたちには出会えた。
3等身の石仏さん。リラックマに負けず劣らずかわいい。
石段を下りた場所にも磨崖仏の看板があった。行ってみよう。
お迎えに来てくださる釈迦三尊。こちらもほのぼの系の石仏だ。
クールな理論派担当の二仏。
ずいぶん夕方に近づいて来た。もうすぐ街に灯が灯る頃だ。
素敵なカフェが坂の途中にあった。大正時代に建てられた登録文化財だそうだ。
こんな高台で飲食店をするのは、大変だろうなあ。でもお店の名前も分からないので、検索したところ、なんとゲストハウスだった。「ゲストハウスみはらし亭」。1Fはカフェ。
そしてこの素敵建物は、尾道空き家再生プロジェクトのボランティア総動員の人海戦術だけでは再生ができなかった。そこであきらめないのがこのプロジェクトの凄いところだ。初クラウドファンディングで目標額を150%達成し、難しいリノベーションを見事成し遂げ、ドミトリー形式で格安な宿泊費にし、朝夕の絶景を眺めながらのお食事ができる人気宿泊施設に変貌したのだ。
いまどきの若い人たちって、なんかすごいものがあるわ(私の知っている限りでは、ほぼ女子ですが)
「文学のこみち」をくだる。
山のような石碑があったので、すべてを紹介するのはムリ。ということで、抜粋して
一部をお届けします。
そうそう、こんなのどかな感じでしたよ、下山するときの風景はね。
松の下を潜り、石の間を抜ける、らくちんトレイル。でも登って来る人たちは、さすがにゼーゼーハーハーだった。まだこのあたりは山頂近くだから、ずいぶん登って来た後だもんね、当然。
風光も明媚。
『東海道中膝栗毛』の作者だけに、彼も旅が好きだったのかも。それとも続編のための取材旅行?
彼は日本初の職業作家らしい。『東海道中膝栗毛』が大ベストセラーになり、流行作家になってしまったのだ。彼担当の蔦屋の編集さん?が、原稿ができるのを隣で待っていたというウワサもある。
ちょっとした岩場にさしかかる。
このスキマをくぐり抜けろということか。
案外、大丈夫。
うまい! さすが神様ですね。
この見晴らしのいい一等地にある石碑は、
もちろん、林芙美子先生だ。そりゃもう、ここでなきゃね。
「海が見えた、海がみえる」。リズミカルで、切ないほどの郷愁だ。
次なる俳句は、児童文学のひと。
巌谷小波先生。「大屋根は みな寺にして 風薫る」
やっと千光寺までやってきたようだ。
千光寺山ロープウェイ
すでに陽は傾きかけて16時半頃。急がねば。
線路の向こうに連なる寺院を見つつ、千光寺山ロープウェイを目指す。通過する電車と鐘楼が並び立つっていうのも、ドキドキする光景だなあ。
ほら、向こうから黄色い電車がやって来た。すでに斜光で影が伸びている。
郵便局で教えてもらった通りに歩いたので、迷うことなく乗り場に到着。そばにはお洒落な『喫茶こもん』も。ここも実はロケ地。『転校生』『ふたり』などの映画で使われたそうだが、いまは急いでいるので、また今度。
私が乗る時には3人ほどの乗客だったが、そのあとどやどやと若者たちが乗り込んで満員状態に。
最終便のひとつ前のに、乗ることができたようだ。
しかも道中の案内はテープではなく、女性の車掌さんだった。
尾道を箱庭状態で俯瞰できる3分間の空中散歩に、しゅっぱ〜つ!
寺院&墓地の箱庭スタート。
ビルと尾道水道の箱庭。
ひしめく寺院↓ すれ違うロープウェイ。
おだやかな町並み。建物も、山と海の間にぎっしり寿司詰め。
山の岩だらけの小径も見える。
整備された道なので、山道だけど歩きやすいかもしれない。帰りはここを通るのだ。
川みたいだけど瀬戸内海なんだ、尾道水道。
到着! あ、キップ渡さなきゃいけないのに、見当たらない! カバンの中をゴソゴソして、最後に降車する。
展望台へ行く途中、石段の横手の竹垣に遭遇する。造園組合青年部制作の「臥龍垣」。
島々や船々が、郷愁をさそう夕暮れ。
おのみち、キター!!という感じですね。
若者たちも特等席で、カメラのシャッターを切る。そしてカップル率多し!! なるほど、わざわざ夕暮れにロマンチックな場所に来るのは、そりゃあねえ。
桜にはまだ早いけど、充分ロマンチックな風景だ。
彼等のおジャマにならないよう、早々に下山だ。というより、日が暮れる前に山を下りないとね。