「とんまか雛通り」を歩く。
お寿司屋さんを出てしばらく歩くと、ちいさなスーパーの外壁面に、無人野菜販売コーナーがあった。
馬のイラストが目印だ。
農家直売、しかも無農薬、そしてほぼ100円。
もうお昼過ぎだから、めぼしいものは売り切れているらしい。
究極の信用販売だ。電車の不正乗車はあっても、直売野菜の不正取引はしない、という空気感がある。
そのあとにも、「粉河寺縁起絵巻」の案内版は続いていた。
「とんまか雛通り」にふさわしい、ショウウインドウの飾り付け。これは昭和の雛人形っぽい。子どもの頃、見た感じの段飾り。(親元が?)裕福なおとなりの家には、こういうのがあった。わが家はゆで卵や折り紙のお雛様だったが、それはそれで充分満足していた。
昔ながらの立派な日本家屋が出現。
堂々たる商家の佇まいだ。
しばらく行った先には、ナマコ風腰壁の蔵屋敷があった。かつては、よほど栄えた門前町だったことが偲ばれる。
繊細な鶴の瓦が床しい。
白壁の蔵のとなりには、
装飾タイルがびっしりと張られたビルがあった。
立派な建物が寂れている様子は、ちょっと物悲しい。
さあ、聖地の結界へと渡る橋にたどり着いた。景観から浮き上がるほど赤いけど、たしか永源寺もこんな感じだった。
向こうのこんもりとした杜が、粉河寺につづく神社なのかも。神仏習合の名残が濃厚そうだ。
門前町には和菓子屋さんが付きもの。いかにも「お饅頭屋さん」的素朴さがうれしい。店内の半分は段飾りに占められているが、平素はここでお菓子を食べられるのかも。「笑顔堂」という屋号も、シンプルかつ昭和っぽくていい。