山門水源 入り口にたどり着く。
バスに5分ほど揺られ、「上沓掛」という場所で降りる。ここにも道しかないので、運転手さんに、どっちを向いていけば目的地にたどり着けるのか訊いてみた。「やまかどすいげん・・・?」と小首をかしげるおじいちゃんドライバーに、不安でいっぱいだったが、数秒後「ああ、こっちの坂をのぼったところですよ。」
・・・安堵。タメないでくささい!
ゆったりとした上り坂の途中に目印になっている建物がある。クリーンセンター、つまりゴミ処理施設だ。ちなみに山門水源の駐車場は、元「斎場」跡地。現役でなくてよかった。すでにアプローチから人里離れた山の中だと判明する。
舗装したゆるやかな坂道をたまにびゅんびゅんと車が通り抜ける。両側は草木が爽やかに生息して、ここは人間ではなく植物たちの支配の下にあるのだなと思う。
車以外は、人っ子一人とおらない。まるで信州の山へ続く車道みたいだ。
たまに緑の中から、がさっ、ごそっ、という音が聞こえ、びくびくだ。
人間は自然にはかなわないなあと、まだ到着もしていないのに、しみじみ。
『山門水源』とはよく名付けたものだ。こんなきれいな水をみたのは久しぶり。
水がきれいだと、緑も信じがたいほどきれいな色にみえる。自然のままみたいだが、実はよく手入れされているのがわかる。でないとこんなにきれいにはならない。
やっと入り口に到着。
たぶん滋賀県民でさえ、知っている人は近くに住んでいる方くらいかも。湖東、湖南はもちろんのこと、もしかすると湖西のひとも山門水源を知っているかどうか。
案内板で指示されたとおり、途中の事務所の水道で靴底を水洗いし、外部からの種を除去する。それほどの徹底ぶりだが、それを点検したり注意する人もなく、自主判断に任されている。山にトイレはないので、入り口の簡易トイレですませておくこと。
前を行く老夫婦のビニール袋の中身がきになるところだが、幸か不幸か、彼らは私との距離をどんどん広げていき、たぶん健脚コースへと向かった模様だ。
もうすぐお昼だというのに私はクマの鼻怖さで、いつもならありえないことだが、食べ物を一切持ってこなかった。若い頃、鹿にお弁当を奪われたトラウマもある。鹿はお弁当を置き去りにしたら逃げられるが、クマからは逃げおおせる自信はない。
しかし、それ以上どうクマに注意したらよいのか、私にはわからない。