歳時記/冬
ときたま「歳時記」を読んでみたくなる。春夏秋冬、それぞれが1冊にまとめられた俳句の本だ。
ひととおり読んではいるけど、もちろん覚えているはずもない。季語別に並んだ俳句を、適当に開いたページを読んだり、季語から選んで読んだり。そのときどきで、心に引っかかる俳句があって楽しい。
本日は「春待つ」と「春近し/春隣」の項目を読んで、思わず「おお〜」とか「ふふっ」となったもの。
時ものを解決するや春を待つ 高浜虚子
さすがは虚子!クールだ、と虚子のことを何も知らないクセして根拠なく思った。
しかし虚子にはこんな句もある。
壇の浦を見にもゆかずに河豚をくふ
古の歴史に思いを馳せるより、温かいお部屋で河豚を食うに限る、ということか? お茶目じゃないか、虚子。
春待つは妻の帰宅を待つごとし 鈴木鷹夫
鈴木さんは愛妻家なのだろうか? こういう妻になってみたいものです(ほんまか?)
叱られて目をつぶる猫春隣 久保田万太郎
さすがは久保田万太郎!と、ほとんど久保田万太郎のことを知らないのに、思わず膝を打つ。ありありと猫の顔が目前に浮かんでくるじゃありませんか。
そこで久保田万太郎の他の句をネットで探してしまう。
仰山に猫ゐやはるわ春灯
ん? 久保田さん、猫好き? 京都人? と思ってウィキで検索したら、なんと浅草生まれのちゃきちゃきの江戸っ子じゃありませんか!! 祇園で遊んだときの、耳にした舞妓さんの言葉なのかしら?
時計屋の時計春の夜どれがほんと
ああ、わかるわ、わかるわ! でも時計屋の時計が全て正確な時間を指していたら、それはそれで味気ない。
今日もうっすらと雪が積もった寒い日なので、春が恋しい俳句をピックアップしてみました。
テキスト/「俳句歳時記 第4版 冬」 角川学芸出版 角川文庫