甲州の民家はイワヒバ・ハウス
次は山梨県甲州市の農家だ。再び一般的な民家に戻る。・・・ん? 一般的かな? すごく軒が低い。この軒の低さは、神戸の古い民家「千年家住宅」みたいだ。
もともと山の斜面に建てられていたので、風を防ぐためにこんな風になったそうだ。
「芝棟と土座のある甲州民家」ってあるけど、芝棟って?
「芝棟」とは、茅葺き屋根の棟に芝土をおいて棟の固めとしたもの。芝土に生い茂る植物が根を張ることで、棟を固定し風雨への抗力を高める棟仕舞の一手法だ。しかし1960年代以降、茅葺き屋根の消失とともに急速に姿を消した。
屋根の頂上にはイワヒバを植えてあるらしい。土を入れて屋根が飛ばされないよう、土を入れて重みを持たせてあるのだ。
なぜイワヒバなんだろう? と気になって調べてみた。
かなり不思議な植物で、分類は苔類らしいけれど、水はけさえよければなかなか長寿を保つそうだ。冬眠したり、乾燥しても仮死状態にはなるけど枯れることはないみたい。けっこう古くから(文化文政の頃らしい)日本人に愛されてきた古典園芸植物だと、下のHPに書いてあった↓
現在は、雑草や、もしかすれば雑木などもはえているのかも。草取りをするには大変すぎる場所だし、しょうがないか。っていうか、むしろ根を張ってくれるから草はウェルカムなのかも。
こちらの花は植えられたもの?? 青空にピンクがやさしい。
遠目で見ると雑草なんだけどね。
反対側に回ると、屋根全体が苔むしている。もふもふの緑の屋根だ。棟には草どころか樹木が!! いいのか? 大丈夫なのか?
裕福な広瀬家ではあったけど、以外にも質素な暮らしぶり。
中は土壁で籠や「しょいこ」などがある。本業は農家だけど、農閑期には荷物の運搬業をされていたらしいので、これらは大事な商売道具なのだ。
まるで土蔵のように、あちこちに格子の入った窓がある。かろうじて採光をとっている。別に板で仕切ったりしたとは思うけど、冬は寒かったろう。
天井はすだれのようなもので覆われている。
ものすごく味のある空間だ。斜めの木が素敵。
このときには曇っていたけど、こんなに外が明るい。厚い土壁にちいさな格子窓が少ししかないですからね。
素朴で力強い屋根。17世紀の終わり頃には、家はこんなだったんですね。
風が強くても、これだけ軒が低ければ安心感がある。
「芝棟」にすっかり注意を奪われていたけど、「土座(どざ)」という説明もありましたよね。下は「イドコ」と呼ばれるムシロ敷の居間で、このような床を「土座(どざ)」というのだそう。
ムシロの下は地面を付き固め、茅束が敷き詰められているとか。
柱などが土壁で塗り固められた壁面は、かっこいいなあ。