何回泣かす!
昨日から佐藤多佳子さん原作の『しゃべれども しゃべれども』を勝田文さんがコミック化した同タイトルのマンガを(いつものように同僚の方からお借りして)読んでいる。
あの長編をコミック1巻で完結させるって、一体どうやって!?と、おそるおそる読み始めたが、キャラクター造形からしてすっぽりハマっていた。主人公と彼を巡るメインな登場人物はむろんのこと、主人公の祖母「ばあさん」、今昔亭小三文師匠、主人公の苦手な白馬師匠と、サイドのキャラクターまでが素晴らしい。愛らしく軽みがありコミカルで切ないという、もう私にとってはツボすぎるマンガだった。
しかも原作の小説も、夜明けを見るくらい一気読みして号泣だったので、マンガには描ききれなかった小説のあれこれまでもが思い出されて、小説の場面の空気感までもがよみがえったりとか。
逆に小説ではテンポの重かった部分で、消化しきれなかった事柄は、マンガで納得できたりもして。
ヒロインの十河さんが、(私には)理屈ではわかるけど感情移入が難しいキャラクターだったので、その点をマンガでフォローできたと思う。恋愛部分がいまひとつ感覚的に唐突な気分だったのだけど、マンガでは不器用な恋というのが分かりやすく流れていた。なるほど、こういうことだったのかー。
でもきっと勝田文さんは、泣く泣くカットした部分とかもあったろうな。湯河原さんのロマンチックなお家や彼の愛妻とか、三つ葉さんの稽古場でのイカパーティの場面?(だったっけ?)とか、私が勝田さんなら「枝葉にすぎないけど、場面的にはものすごく描きたい!」と悶絶しかねない。
そういうのをストイックに整理して、メインストリートをまっすぐに丁寧に描かれていて、結果、大成功なのだ。
小説とマンガをセットでおすすめしたいというのは、他にはあまりないかもしれない。コミカライズでこんなにいい出来って素晴らしい。これは、セットでこそ、すごい相乗効果です。片方だけなんて、もったいない。ぜひどちらもご賞味ください。
白状すれば、出勤途中の電車で半泣きでしたから(笑) 何回泣かせば気が済むのだ、『しゃべれども しゃべれども』。実際、なんらかのシーンを思い出すだけでも「あかん・・・」というときもあるくらい、「きます」。