ふぐの快楽
子どもの頃に仕入れた知識として、「ふぐは旨い、でも毒がこわい」というのがある。その頃はふぐどころか、お刺身すらめったに口にできないもののない時代だったので、「どんだけおいしいんや、ふぐ?」と想像に想像を重ねていた。
成人して以降、「てっちり」や「ふぐ刺し」をひとくち食べる機会もあったが、あんなに薄くては味なんてわからない。しかも宴席なので、そうそうひとりでぱくつく訳にもいかず、ふぐの美味しさはながいことわからず仕舞いだった。
ふぐに味をしめたのは、ごく近年である。調理済みであとは骨をはずすだけ、という状態になったサバフグが3、4匹入ったパックを見つけたので、魚売り場のおっちゃんに調理方法を聞き、購入後、骨を外してトリのササミのようなフグを唐揚げにした。
これがもう!! 淡白なのに深い味わいなのだ。ササミににているがふんわりしている。アミノ酸が凝縮されているのでは、というくらい塩こしょうだけで素材の味わいがたちあがる。
当然、我家の揚げ物界で、堂々第1位を余裕のよっちゃんで制覇するツワモノだ。揚げ物界のみならず、我家の晩ご飯界でも5本の指に入る猛者かもしれない。常に1パックでは物足りない人気を誇る。
ということを忘れていて、今日は1パックしか購入しなかった。危ういところだったが、いつも情け容赦なく「食べ物は早いもん勝ち」の論理にのっとって行動するKちゃんが参加していなかったので、かろうじてことなきを得る。
もっとも、このサバフグは、常にお店には置いていない。入荷している日の方が少ない。だから見つけ次第、購入必至なのである。しかも作るのは揚げ物、下ごしらえと後片付けに時間をとられるので、時間的余裕のあるときしか購入出来ない。貴重な邂逅を調理時間がないため、みすみす泣く泣く見送ったことも。
そんなこんなで、数ヶ月ぶりのサバフグの唐揚げを食べられて、非常に幸せな気分で夜を過ごせた。食べられなかったKちゃん、ごめんなー。(本人は知らぬが仏であるが)