『マッチ売りの少女』たち
アンデルセン童話のなかに『マッチ売りの少女』という有名な話がある。
貧しい少女が、裸足で薄着で雪の町中で「マッチはいかがですか? マッチを買ってください」と売り歩くけれど、マッチは一つも売れない。しかし「全部売るまで帰って来ちゃダメだよ!」といわれているので、日が暮れても帰ることができないのだ。
夜になってあまりの寒さにマッチを摺っていくと、さまざまな幻が浮かび消えてゆく。最後に、やさしかったおばあちゃんの幻が手招きをするのだ。これは決して消してはいけないと、少女はマッチの火を燃やし続け、大好きなおばあちゃんと旅だってゆく、という悲しいお話である。
これを地でいくようなお仕事をされている方々が、12月にはいらっしゃる。
寒風吹きすさぶ戸外に、易者のように台をおいただけの簡易出張販売所がある。そこに制服姿のひとがいて、ひとり、乃至ふたりで、道行く人々に声をかけるのだ。「年賀はがきはいかがですか〜」
たいていの人は立ち止まることも、顔を向けることもなく、無慈悲にも足早に通り過ぎて行く。
そして毎年のことながら、年明けに書くことになるかもしれない年賀状の予備を、私はここで買ってしまうのである。
郵便局、恐るべし! もしかすると職員のみなさまは「ぜんぶ売るまで帰って来ちゃいけんかんね!」と言われているのかもしれない。
我家ではこれを「マッチ売りの少女大作戦」と、本日名付けさせていただきました。