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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

紙魚子(しみこ)のおでかけのあれこれ、ユニークな家族、節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物などを書いています。

衝撃。

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 今日は私が当番の読書会で、課題本は高野秀行/著『異国トーキョー漂流記』。とても軽い読みやすい(でも実は重い片鱗がある)本なので、はたしてみなさんの読後感想は?とヒヤヒヤものだったのだけれど、なかなかな盛り上がり方だったので、一安心だった。

 読書会で「村上春樹さんが原発について素晴らしい発言をされている」という話を聞いてきたので、夜中になってPCに向き合える時間ができるやいなや、検索して読んだ。「6月9日のスペインのカタルーニャ国際賞授賞式で配布された作家村上春樹さんの受賞スピーチの原稿全文」というものだ。

 これを読み、個人的にえらく衝撃をうけてしまって、しばらくは茫然自失だった。私が内心忸怩たる思いを抱いていた原発事故についての「個人的反省」について、非常に的確に指摘されていた文章だったから。あまりにもシンクロしている部分については、あたまがクラクラしそうだった。ちなみに「個人的反省」とは、福島で原発が事故を起こす以前に、一体何をしただろうか(あるいはしなかっただろうか)、という反省である。

 小学生の夏休みの宿題に、読書感想文というのがある。私は小学生の頃、課題図書の読書感想文要員だった。これは、抜きん出ていたからではなく、及第点をキープできるありきたりの作文が書けたからにすぎない。

 たまたま『碑(いしぶみ)』という本が課題図書だったときがあって、「なぜこんなこわい本を読まなければいけないんや!」というくらいショックだった。原爆の落ちた広島の直後を描写したノンフィクションだったのだ。それ以来、

広島にある原爆死没者慰霊碑にある言葉、

「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」

という言葉を子どもながら胸に刻み、原爆死没者に深く誓った。まだ10歳を少し過ぎたくらいの年頃の話だ。

 そして20歳前後くらいの頃に、もう一度この言葉を、原爆死没者の皆さんにダイレクトに誓い直したことがある。これは「不思議な体験」かもしれない部類のことなので(単に寝ぼけていただけかも?)、深くは触れないが、私にとっては大切な事件だった。

 図書館司書としては、チェルノブイリや東海臨界事故などもあったため、それなりに原発については本を集めたり、危険をアピールしたり、原発にアンテナを張っているマイナー雑誌を購入したりもしていたが、図書はおろか新聞すら予算がつかず購入できないという事態になり、この時点で私が仕事上できたことは中断した。

 それから随分経った今春に、突然「安らかに眠って」などいられない事態が起こってしまった。「過ち」を、なんと「自分たち日本人の」手で繰り返してしまったからだ。これは原爆で死んで行った人たちへの、手ひどい裏切りではないか。もう本当に忸怩たる思いだった。

 この感覚を共有してくださった、そして世界中のみなさんに丁寧な解説と呼びかけをしてくださった村上春樹さんに、心からありがとうと申し上げたい。私の一方的かつ個人的な思いだけなんだけどね。