夏休みの心得
子どもの頃7月になると、「夏休みのこころえ」みたいなものを学校でもらってきた。
「計画的にすごそう」「ラジオ体操に行こう」「規則正しい生活をしよう」「買い食いをしない」「宿題は早めにやろう」「暴飲暴食はしない」「つめたいものを食べ過ぎない」「交通ルールをまもろう」「本を読もう」「家の手伝いをしよう」などなど。注意事項ばかりのしょうもない文書だったけれど、もうすぐ夏休みがくる先触れのようで、わくわくした。
ラジオ体操に行くの、大好きだった。かつて分教場だった跡地の広場で、朝露のおりた雑草で足を濡らしながら、雑音だらけのラジオで「ラジオ体操のうた」を聴くと、ああ、夏休みだ〜♪とうっとりした。カードに出席スタンプ(「出」の○囲み)を押してもらうのもうれしくて。きっとこれが、観光地や駅なんかでスタンプを押さずにはいられない気持ちの原点だったのかも。
本は家の蔵書を何回転もさせて読んだ。長期休みには学級文庫も学校図書館も利用できないからだ。まだ市立図書館はなく、バスで乗り継ぐ私立図書館も日曜の午後のみオープンだったので、夏休みといえど、週に一度しか借りに行けなかったのだ。
でもそれも悪くはない。おかげで「星の王子さま」とかファージョンの「ガラスの靴」とか江戸川乱歩の「黒い魔女」(「黒蜥蜴」の子供版。少年探偵団シリーズのなかで、ダントツ好きだった)とかチャペックの「ながいながいお医者さんの話」などのお気に入りは、何度も読んで血肉になっている。
家の手伝いも依頼があればしたし、計画もバッチリ立てた。もっともたいていはあまりにも立派な計画だったので、日を追うごとに将棋倒しにコケて行き、2学期が始まる1週間前にはソワソワしていたっけ。つまりラジオ体操と手伝いと読書以外はやりたい放題の楽しい夏休みを過ごしたのだった。
そして先日、電力会社から「計画停電予定表」が送られてきた。ちっ、と思いつつも節電のために「はやねはやおき」シフトに移行しようと思う。今年の夏休みの心得だ。「はやね」といっても「遅くとも0時には寝よう」なんだけどね。早起きの最終目標は5時。今朝やっと5時半に起きられたが、30分早いだけで恐ろしいくらい余裕ができる。早起きは三文の得、というけれど、もしかするとそれ以上かもしれない。