妖怪よりもある意味コワい。
疲れた。
今日は大量の買物をした。クリーニングを持って行ったり、図書館に行ったり、「たねや」に行ったり、ブックオフに行ったり、ドラッグストアに行ったり、西友に行ってからイオンにも行った。
でもそのくらいで疲れたりはしない。
帰って来たら、おばあちゃんが帰ってくる30分前。晩ご飯の支度をして、今日必要分の畑の収穫をする。晩ご飯のあとは、おばあちゃんを車椅子に乗せ、洗面所、トイレ、ベッドと巡回し、着替えを始めたが、おばあちゃんが自力で服のボタンを外そうとしているので、その間、ハンパ仕事をしようと洗面所を通り過ぎようとした。
その時だ。「家政婦は見た」!
洗面所の引き戸のレールに半分カラダを隠してはいるが、あと半分をカーブさせて物思いにふけっているアイツを!
ほんの3日前にもアイツの片割れが、蛇行しながら台所の隅を走り去ろうとしているのを発見したのだ。
たまたまそこにあった掃除機の頭で、渾身の力をこめて撲殺したばかりだ。「凍殺ジェット」も携えたが(水回りの必需品!)、肝心要の切迫した事態なのに、「ぷすっ、ぷすっ」と頼りないため息を洩らし、でもたまにしゅーーっ!と雪女のような零下の霧を吹きかけるに留めた。殊勲賞は掃除機くんである。「凍殺ジェット」も、最終的にヤツの動きを止めたことは認めるが。
毎年のことだから、すでに読者は何が起こったのかご存知だろう。ついに現れたのだ、地獄からの使者ことムカデのヤローが!
今回も「凍殺ジェット」と水を入れたジュースの空き瓶を携え、果敢にムカデに立ち向かった。本日の「凍殺ジェット」のゴキゲンは如何だろうか? ムカデが物思いにふけっている間に、テストしてみる。
「しゅーっ!!」おお、振ればちゃんと出るじゃないよ。もう一回。
「しゅーっ!!」カンペキだ(感動)
「しゅーっ!!」よし、準備完了だ! いくぞ、雪女! いざ、戦場へ!
戦いの火ぶたは切って落とされた。ムカデに「凍殺ジェット」を向けて発射する。
・・・「ぷすっ、ぷすっ」 ただならぬ気配とマヌケな音で、ぞわぞわと動き出すムカデ。
おいいーーっ!?
このお、お、おちょくっとんのか〜?? 雪女どころか、とんだガス欠女だ。
対ムカデより、対「凍殺ジェット」に怒り心頭で力を込めた左手には、予備の武器として持ったジュースの瓶。これでムカデに狙いを定める。
しかし敵もさるもの、2度3度とかわし、なんと、こちらに向かってくるではないか。
えいいいっ!
と、瓶から水を跳ね上げつつ、ムカデの真ん中に瓶の底が落ちた。あえなく轢死するムカデ。よくやった、でかしたぞ、瓶! 味方の勝利だ!
粛々と亡骸を処分し、ふたたび日常の平和な生活が戻って来た。私はふたたび、おばあちゃんの着替えと就寝のケアに戻ったのであった。
一日の仕事もほぼ終わると、あの熾烈な戦いの疲れがどっとおしよせてくるのだ。ああ疲れた。