今しかないが、足もない。
8月の末に東北旅行を企てたが、台風と日程がぴったり重なり、行きに乗るはずだったフェリーも、出立の3日前に欠航が決った。ちょうどH氏が長期出張の予定があり、その間に出発すれば家庭的にも最小限の支障で出かけられる。それがすべて水の泡になってしまった。
そこにH氏の天の声が。「行ったらいいやん。絶対あとから、あのとき行っといたらよかった!って、後悔するで」。
たしかに。僅かながらもお給料がいただけ、働ける場や環境があり、週休5日という経済状況と時間の余裕。子育てもほぼ終わり、いつ介護生活が再び始まるかわからない狭間の時間。
そこから、もういちど胸に手を当てて「本当に東北でいきたいところはどこか」と自問自答して計画を練り直した。南三陸と盛岡、秋田の男鹿ははずせないので、角館を諦め、僅かな滞在時間なので駅前近辺しか行けないけれど、花巻と遠野をチョイスした。息子Tくんのおススメの場所でもあったのだ。ついでにラストの宿を花巻温泉郷にして、一気に旅の疲れを取ってから帰宅するという計画を立ててみた。最終日に東北本線を途中下車して中尊寺と毛越寺に道草し、一気に帰宅するのだ。
しかしプラン作りは苦心の連続だった。まず、足がない。鉄道でさえ在来線の本数が少ない。そのうえ接続している電車も、よりいっそう少ない。バスの存在を見つけて一瞬喜ぶも、「夏季のみ」とか、「土日祝のみ」とかの小さな文字を発見して、「ぬかよろこび」に始終した。わずかにある平日のバスも、電車が到着する2分前に発車している。
どーしろというのだ!
と、投げやりになり、捨て鉢になり、腰砕けになったことも1度や2度ではない。みちのくは、個人的な旅行者については、「来れるものなら、来てみろ」的挑発を放っているのか? 団体さんやツアー客、もしくはタクシーを借り切っての富豪でないと受け入れてもらえないのではないか?
仕方ない、いっそ「観光」をあきらめてしまおう、と腹をくくった。行ける場所の1カ所だけでも行ければ、御の字ということにしておこう。こうなったら、「岩手や宮城や秋田の空気を吸いにきました」ぐらいの気持ちで行く事にしよう。もう計画の段階で、け戦が決ったようなものである。というマイナスからのスタートが、9月の計画段階だったのだ。
そしていよいよ、10月10日の体育の日に出発することになる。