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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

紙魚子(しみこ)のおでかけのあれこれ、ユニークな家族、節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物などを書いています。

現在、臥せっております。

今週頭から風邪で体調がすぐれず、「体温はは虫類並み」なはずの私が、高熱を出してベッドで過ごすはめに。

 

本日、時間の余裕がとれ、少しは動けるようになったので、病院に行くとインフルを宣告。隔離されることになり、帰りは特別出口から(汗) たぶん、阪神大震災当日に罹って以来だから、ずいぶんな間隔があいている。それにしても、治りそうで治らないのがもどかしい。しめしめちょっと動けると思ったら、いつの間にかびゅーんと発熱してくるのがわかったりする。

 

実は17日(金)に、京都東山でフル稼働したのだけど、この話はまた、全快してから、ゆっくりと。(順次、下にアップしていきます)

 

其一の正体

そしてやっと鈴木其一展へ(笑) 

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3回の展示替えがあった大回顧展で、すでに晩年の作品に移っていた。其一以外にも、お弟子さんの作品が多くある。

 

鈴木其一(1796~1858)は江戸後期に、江戸琳派の優美な画風を基盤にしながら斬新で独創的な作品を描いた人。単なる画家なだけではなく、商品として売れるものは何か?ということも考えていたマルチクリエイターみたいな人だったような気がする。

 

其一は江戸琳派を開いた酒井抱一(1761~1828)の一番弟子で、いわば江戸琳派という工房の、腕利きの人気職人といった地位にあったらしい。師に忠実に、優美で繊細で風情のある江戸琳派を築いたが、師・酒井抱一の没後は、さらにダイナミックで自由放逸な画風になったらしい。

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 「月次絵」(つきなみえ)という一群の展示がある一部屋があった。「月次絵」というのは、十二の月を象徴する花鳥や景物、行事などを描いた作品だ。いかにも日本人好みのテーマに、日本人好みの美しく繊細な絵柄をのせるとは、クリエイターというより、商売人の発想でもある。グッズを1セット12個にできるって、1セット売れてもデカイじゃないですか。

 

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 12の月に因み、扇や短冊、画帖などの小画面に12図セットで描いた作品を、其一は多数残しています。それらの各画面は季節の情緒に満ち、華麗で多彩な表 情をみせています。おそらくは豪商らの贈答品として制作されたと考えられます。12図通しでも、各月ごとでも楽しめる其一の月次絵は、特別に誂えられた豪 華なダイアリーのように持ち主の傍らで愛されたことでしょう。(細見美術館HPより)

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 もちろん其一は、「シーズンもの」にも目配りしている。

  節句の掛物「節句掛(せっくがけ)」は多くの画家にとっていわば季節商品だったが、其一は新春、雛や端午の節句掛、ひいては羽子板や凧までも美しく整えた。それらは大名や豪商の贈答品として多くの需要を得たようである。

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 また、其一は節句掛に「描表装(かきびょうそう)」を起用し、さらに草花図や物語絵、歌仙絵へと展開していく。「描表装」とは、本絵の周囲の表装部分まで絵画として描く趣向だ。絵表具・画表具ともいう。ここでは其一の柔軟な発想と遊び心を、たっぷりと感じることが出来る。その趣向は鑑賞者に二重の楽しみを提供するだけでなく、現代にも通じる其一デザインの魅力に溢れている。

 そんな鈴木其一の絵を見て、驚いたこと。「めちゃめちゃうまいやん!!」というのは、予想通りだったのだが、それ以上に「線」があまりにも自信満々なのだ! 彼の頭の中に思い描いていた設計図どおりの、太さ、勢い、表情の線が、実際にドンピシャに描かれている、ように感じた。間近で見て、ハッとするほどに、自信満々さに溢れかえっていた線。

 

ええっ!? これって・・・どこかで「お馴染み」の感じだ。ええっと?

 

 そうそう! 思い出した! 怪人二十面相やん!!

 

 鈴木さんの絵は、もちろん繊細で風情があり、優美なのだけど、すごく怜悧で自信満々なのだ。画面構成なども晩年になるほど斬新で、「どやどや!?」 という(江戸っ子ですが)自己顕示の姿勢がにゅっと顔をのぞかせたりしている。それは、ちょっと微笑ましい少年らしさでもあり、ちょっと冷やっとする彼の「闇」の部分も垣間見えるものだったり。そのなんともいえないニュアンスが、どこか怪人二十面相をふと思い起こさせるのだ。

 

ばっちり構図の計算できて、計算通りの筆運びができて、「めちゃめちゃうまいわ!」と本当にびっくり するんだけど、「どやどや!?」が、ポーカーフェイスながら見え隠れするのが、ちょっと可笑しい。

 

「おれさまは、世間をあっといわせたいのだ」といわんばかりの表現方法も、ね。

あこがれのタルトタタン

会館を出て、雨の岡崎界隈を歩く。東北旅でも重宝した薄手のレインコートを着用したのは大正解だった。雨なのでさほど寒くはないし、傘があっても濡れているので、ウールのコートではますます重くなる。

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噴水の向こうは動物園だ。

なんとなく、冬の動物園はデートコースによさげな気がする。雨の動物園も大人な感じがする。ちなみに「冬の動物園」というタイトルで谷口ジロー先生がコミックスを、「雨の動物園」というタイトルで舟崎克彦先生が児童書を出されている。

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平安神宮の応天門を右手に見ながら、まっすぐまっすぐ。スターバックスや蔦屋書店も通り過ぎ、そのまま川を越えて直進して行くと「細見美術館」が目前なのだが、川を越えず反対方向に右折。

 

実は細見美術館の近くにタルトタタンの美味しいお店があるという情報をネットで拾ったので、行って見ることにしたのだ。

aquadina.com

 

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タルトタタン」というケーキがある、というのをNHKEテレの『グレーテルのかまど』を見て以来、「タルトタタンというものを食べてみたい」と思っていたのだ。タルトタタンとは、どういうものか? 林檎のケーキで、えらく手間がかかるから自分で作るのはムリだということくらいしかわからない。でも食べてみたいのですよねえ。ケーキの名前というよりは、ほとんど魅惑の呪文ですね、タルトタタン

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たっぷりと林檎を使った、しっとりしたケーキ、タルトタタン。ヨーグルトソースをかけて召し上がれ♪ と、かまど役のキムラ緑子さんの声が、聞こえて来そうだ。

 

しっとりと美味しい林檎のケーキは、アップルパイとはまた違って、のどごしがやさしいのでお年寄り向きかも しれない(そういえば、おばあちゃんに、「りんごのコンポート」をよく作ってたっけ)

 

お店では、青森から林檎を直送されているそうで、となりに青森グッズのスペースも 併設されている。こぎん刺しのポーチや林檎の種類別のジュースなどもあり、かわいく楽しいスペースだ。

 

東北の味が懐かしくなり、林檎のジュースを購入。ラベルもたいへん可愛いです。上が「紅玉」、下が「ふじ」のジュース。

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タルトタタン以外にも、チョコレートケーキの「オペラ」と「くるみのタルト」もある。いずれ制覇してみたい。

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まずは「京都市国際交流会館」へ

ふと気がつけば、細見美術館で開催中の「鈴木其一展」が今週で終わってしまう!というのに気づいたのは、火曜日、2月14日・バレンタインデーのことだった。ところが水曜は体調がいまいち、木曜は予定があり、土日は仕事。

 

もう、なにがなんでも金曜に行くしかない!!

 

ということで、雨の中、京都は東山へ。

 

わざわざ一駅まえの「蹴上」で地下鉄を下車。通路にはカラフルな象さんたち。南禅寺や無鄰庵、インクライン、疎水記念館、平安神宮など神社仏閣や名所旧跡が目白押しの地域だが、やはりここはポップに動物園をモチーフにしたようだ。

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とまあ、そんな場所なので、雨であっても歩くのが苦にならない。

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日本初の水力発電所。琵琶湖疎水がエネルギー源だ。

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雨に煙る看板もゴージャス。この中で銀閣寺は徒歩で行けなくはないが、結構かかる。

 

鈴木さん鑑賞の前に、「京都国際交流会館」内のレストランへ。

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まずはハラゴシラエなのだ。南禅寺前というロケーションが抜群の、おしゃれで美味しいフレンチタイプのレストランがあり、久しぶりに行ってみようかと思い立って「ツムギ」さんへ。

www.kcif.or.jp

 

でもオープンより30分も前に到着したので、扉は固く閉ざされていた。

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仕方なく、おしゃれな階段の写真などを撮っていたけど、それで30分はもたない。

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上の写真は踊り場の壁。

 

それでも時間をムダにはしたくない、と2Fフロアを奥に探索してみると、入場無料の「装丁展」が開催されていたので、コレ幸いと潜り込み、興味津々に時間を潰すことが出来た。

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 夏目漱石の「猫」をテーマにしたものと、自由につくられたものとが展示されていた。プロアマを問わず、素敵な装丁がたくさん。エキゾチックなもの、古い洋書風のマーブル模様のもの、革細工や光り物を使った豪華なもの、絣や紬など素朴な布地で包んだもの、斬新なデザイン、大胆な構成、繊細な色使い、かわいらしいもの。

 

 受付と案内をされていた方に、本の修理のことで質問させていただいたら、その方もなんと元図書館員。「『怪傑ゾロリ』のシリーズなんかは、どうしようかとおもうくらい、激しく壊れますよねえ」と意気投合。

 

アンケート用紙にもしっかりこたえ会場を出る。同じフロアのレストランに戻ると、オープン間もない感じで、私が一番乗りだった。注文するのは、もちろん1500円のAランチだ。貧しい客ですまない。ちなみにランチメニューは1500円のカジュアルフレンチのAランチと、2500円のフルコースBランチしかない。いまだにBランチは私にとって、雲の上の存在である。

 

この日のAランチは「カリフラワーのポタージュ」、小さなあたためたパンが2つ、「スズキのポワレ」「レモンとバニラのムース(すごく小さいです!)とバニラアイス、ベリーソース添え」「コーヒー」でした。下の写真がスズキのポワレ

 

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すべてが絶賛を惜しまないほど美味しかった! カリフラワーのほのかな野菜の持つ甘味が活かされたスープ、パンはしっかりと温めてあり、外側はカリッとして、全体にちょうどいい堅さ。単品でも小麦の香ばしさにうっとりしつつ、新鮮でしっかりしたスズキのポアレと付け合わせの野菜をいただいたあと、ポアレのソースを絡めて、もういちど。さわやかなムースは上品に食べても3口だけど、それを惜しむようにいただくのも一興。バニラアイスのベリーソースには、丸ごとのラズベリーもあり、幸福感につつまれる。コーヒーもなみなみとしており、濃いめのフレンチローストなのもうれしい。

 

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実は会館の奥にある「和館」では、「アルスシムラ」(志村ふくみさんの染織りの教室)の卒業展があり、せっかくなのでそちらも行って見る。

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いや〜、圧倒されました。やはり自然から得る色ってすごいすごい! と感動の 連続。帯や着物を「糸を染める」ところからスタートし、その糸を織機にかけて織り上げ、たった1年や2年でこんな素晴らしい作品を作り上げられることにも驚嘆。

志村ふくみさんの作品は何度か見たことがあるけど、また感動の種類が違うみたい。いや、逆に無名の生徒さんの作品だからこそ、心打たれてしまう部分があったのかもしれない。そのいさぎよいシンプルさと、無心な一生懸命さと、織りながらの作り手が感じている感動が伝わって来たのかもしれない。

眼福というのは、これだねえ。眼が癒されましたよ、ほんと。眼が癒されるなんて、めったにないことなのに。予定外のあれこれを、ぞんぶんに拝見できました。

 

shimuranoiro.com

 

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光のどけき春の日

今日は太陽の光が春である。

 

外に出れば手はつめたくなり寒いことは寒いけれど、太陽の光に力があるのだ。

 

玄関を出れば、いつの間にか椿の蕾がいっぱいついていた。いったい、いつの間に!?

 

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その隣のモクレンには、まるでネコヤナギのように光る芽が出ている。にゃあ、とごあいさつ。

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もしやと思って、蕗を植えた場所を、目をこらしてみると、土と同じ色で擬態!?しながら、ちいさなフキノトウが顔を出していた。

 

またこの土日には、寒さがぶり返すそうだ。三寒四温というやつだろうか。冬場になるとぬうと出現する白い伊吹山は、まだ当分みえるけれど。

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そんなふうに、振り返り振り返りしながら、じわりじわりと春がやってくる。ちょっと手強いけれど、未来への希望に満ちた季節である。

 

出逢った頃はこんな日が来るとは思わずにいた♪

杏里の『オリビアを聴きながら』の一節が、本日のタイトルである。すでに何週間か前の話題になってしまうが、まさにこの歌詞のとおりのことが起こってしまった。

 

近江八幡にあった「イシオカ書店」にて、彼と私の出会いはあった。HPの店長日記で彼の本を紹介してくださり、そのエッセイ集『LOVE』と『PEACE』を2冊同時に購入した。

その中に「『第2次世界大戦』なんて名付けるから、『第3次世界大戦』が起こる可能性があるんだ。『第2次』ではなく『世界大戦ファイナル』って呼ぶことにしよう。」という提案があり、なるほど〜!と膝を打った。たしかに、そうかも。

 

以降、忙しさや睡魔に負け続けつつ

それでも彼の出るテレビ番組は、機会があれば見るようにし

京都と奈良の境目くらいに彼の講演会があれば、

足の指にヒビが入っていても、足を引きずり電車を乗り継いで参加し、

夕方からのイベントがあれば、家事の段取りをして、バタバタと出かけ、

たまにはみうらじゅんプロデュースのカレンダーを通販で買ってみたり、

レンタルショップに『TV見仏記』があれば、借りて見入ったりした。

スキャンダルがあったときには、ひっそりと心を痛めるも、

それまでに「エロくてカッコ悪い自分」をさんざんプロデュースされていた上、

それすら松本清張がらみの仕事のネタにしてしまうカッコよさに降参した。

 

そんな風に、アメニモマケズ的ではない、ゆるいお付き合いを続けさせていただいて、今日に至るのだが、まさかこんな日がやってくるとは。

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雑誌『ユリイカ』が、(私がひそかに「サブカルの巨人」と呼び、実は人間的にも尊敬している)「みうらじゅん」を特集してくれる日が来るとは! やはり長生きはするもんだ、と思ったのでした。

 

イチオシ本の読書会

ほんとはしっかり事前準備が必要だったのに、まったくといっていいほど準備不足で、いきなり読書会に臨む。今回初めての試みなのでネタ本のストックが有りすぎて、絵本袋ふたつを会場に運び込む。

 

それにしても10人に満たない人数だが、見事にかぶらない。それどころか、まったく違うジャンルの本たちが、ひしめいていた。

 

今回、私が紹介したのは以下のとおり。

 

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中2のとき、とても仲の良かった友達に紹介されて、夢中になったモンゴメリのエミリーブックス3部作。プリンス・エドワード島で作家をめざす少女の 青春物語。私的には「赤毛のアン」のシリーズより、はるかに面白い。起伏ある恋愛模様、家族との葛藤、教師との対立、かっこいい友情。すこしばかりゴシックな味わいも。仕事も恋愛もどん底で絶望にまみれた暗黒の日々もあり、なかなかビターだ。なんらかの才能があるというのは、実はたいへん苦しいことでもあるのだ。

 

しかし、深く対立関係にあった人々との和解や、エミリーのたゆまぬ努力、人生で突き当たる壁への恐れを克服していく過程、ゆるぎない自分 自身への矜持、もちろんモンゴメリならではの自然への尽きせぬ愛もふんだんに盛り込まれている。

 

そう、モンゴメリといえば村岡花子先生訳である。ティーンの私が、年1は必ず読み返した青春の愛読書。ツツイ(筒井康隆先生)ファンの私しか知らない高校時代の友達は、乙女な一面に驚愕するかも(笑)

 

一転、民俗学的な話題がぎっしりの1冊をご紹介。昔話や伝承、絵巻などを縦横無尽にひもといて、瓜や龍についてのあれこれを解き明かして行くスリリングな1冊だ。

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瓜といえば、蔓、水、北斗七星、天の川、天体、七夕、瓢箪・・・とどこまでもナゾがナゾを呼ぶ。芋づる式に次々に変化する話題と、絵図などの資料がふんだんに盛り込まれた、奇跡の本だ。日本の伝統文化って軽々しく使うけど、いや〜、これを読んで知ったこと数知れず。中世のことばあそびやなぞなぞ、絵の中に文字が隠されている「葦手絵(あしでえ)」(平安時代に流行)などの文化満載で、1冊読むと古代~中世~近世に渡っての日本の水脈に浸れまくれる。こんなに濃いのに、児童書なんですよね、一応。だからこそ、わかりやすいという部分も。

版元は福音館というのも頷ける。他のところでは、とてもこんな贅沢な本は作れないだろう。「いまは昔 むかしは今」のシリーズ5巻の内の1冊。

惜しむらくは、百科辞典並みの大きさと重さなので、持ち歩くことができないのと、1冊が8千円以上していた(私が買った当時)ので、おいそれとは買えないこと。図書館でぜひご覧ください。

 

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『拝復』は、敬愛してやまない池田澄子さんの句集。今日、紹介しようと思ってたのに、ど忘れしてしまって残念だった一句。

 

売り切れの うぐいす餅の あった場所

 

ショーケースの「うぐいす餅」のプレートの向こうに、黄緑色のきなこが散らばった様子まで目に浮かんできますよ。いそいそと「うぐいす餅〜♪」とお店に来たのに、空のショーケースを呆然と見つめる作者の落胆ぶりが、ちょっと可笑しくて微笑ましい、大好きな一句。

 

『風のささやき』は、姫野カオルコさんのショートエッセイ。同級生の親よりずっと年かさのご両親をお持ちのカオルコさんは、介護生活もかなり早くに訪れたとか。時間がなく、疲れきった介護者も読めるよう、ひとつが5ページくらいの短さだけど、境遇を同じくするひとたちのつぶやきをそっと贈る、カオルコさんのやさしさにグッときます。

 

『いいビルの写真集 west』は、そのまんまなビルとその内装、フロア、階段、手すり、床デザインなどなど、素敵なビルの写真がこれでもか!と目白押し。残念ながら、今はないステキビルの、ありし日の姿も見られます。これを片手に大阪ビル巡りもできる趣味と実用を兼ねた1冊。

 

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『カラフル』『月のふね』を読んだ感動をふたたび味わえそう、という期待に満ちてページを開いたら、いやもう、それ以上に期待できる小説。50年前の教育状況から始まる、硬軟とりまぜた筆致が素敵。1ページの濃さがハンパない。キャラクター設定もありありと目に浮かぶし、ほんのとば口しか読んでないのに、おススメしてしまいましたよ。その場にこの本を読了した方もいらして、私同様絶賛されていましたから、安心してここでもおススメしておきます。久しぶりに納得の森絵都節炸裂。というか、彼女はパワーアップしてますね、確実に。こんなに続きを読むのが楽しみな本って、ほんと久しぶり。