ムーミンと堀江 敏幸さん
先日たまたま「筑摩書房」のサイトを見ていたら、「PR誌ちくま2008年10月号」で、冨原 眞弓さん(翻訳家/聖心女子大学哲学科教授)と堀江 敏幸さん(作家/早稲田大学教授)のお二人がムーミンファンであることを知る。彼ら二人がムーミンについてアツく語っている対談があったのだ。
冨原さんは仄聞についてどのような方かは知らなかったが、あの静かで深い作風の堀江さんがムーミンファンであることは、初めて知ったにも関わらず、おおいに納得。
堀江敏幸さんがムーミンファン? さもありなん。という具合に。
当然、この対談にも堀江さんの珠玉の言葉がぽろぽろこぼれていて、読んでいる間はムーミン谷どころか、シンドバッドが行った宝石がごろごろ落ちている谷に居るようだった。以下、堀江さんの言葉から。
ところで、アニメでムーミンパパの声を担当していたのは、高木均という役者さんで、あんな穏やかな声なのに、映画やテレビでは、悪辣商人や好色なおじさんを演じる人なんですよ。ムーミンパパって、穏やかに見えてすごく激烈なところがあって、ときどき爆発しますよね。なんか放っておくと危ないほうに行っちゃう人で。
でもニョロニョロの自由は自由なように見えてほんとうの自由とは違うんだと、自由に見えて不自由な自由なんだと気づいたりもする。ああいうことに気づける人とそうでない人がいるとすれば、ムーミンパパは前者に属する。
ラストにお二人が「飛行おに」について盛り上がっている(はず!)ところがとてもいいので、さらに引用↓
堀江 飛行おになんかも、好きでしたよ。
冨原 あれはねー。ムーミンママが、飛行おににパンケーキをふるまって、パンケーキを食べる人に悪い人はいないって話になるんですよね。その理屈がすごい(笑)。
堀江 飛行おにって、ほんとうに孤独なんですよね。何百年も、誰にも会っていないとか言って。それでいながら、ちゃんと会いに来るわけです。
冨原 恐れられるのに慣れている人が、だれも恐れてくれないのでびっくりして、うれしくなっちゃう。でもみんな、飛行おにさんかわいそうに、とか言うんでもなくて普通に接していて、それが飛行おににとって驚きなんですよね。妙に優しくはない。あ、泊まるの、じゃあベッド作っとくわ、みたいな感じでね。ぜひここにいて心を癒してくださいみたいなことは、絶対に言わない。そのへんも好きだな。
堀江 甘くない。そこがいいんですよね。
「飛行おに」、私も好きでした! 彼を話題にしてくれて、どうもありがとう!といいたいくらい。ちなみに私は独自の理屈をつけながら、あっけらかんと誰をも受け入れるムーミンママが好きです。