免許センター(後編)
受付15分前くらいに、レストラン(なのか??)から出る。受付前には、すでに蛇行する長蛇の列が出来ている。並んでいる最中に、受付に必要なものを事前回収しつつ、係のおじさんが受付の説明をしてくださった。おかげで受付開始後も順調に列は消化されていく。
実は免許更新で、前回より大きく改正されたことがある。とはいえ中型免許が新設されたとか、酒酔い運転が厳罰化されたとかではない。二つとも私にとっては、あまり関係ない。
今までは更新するときに「交通安全協会費」を、更新に必要な費用だ思い込まされ巻き上げられていたので、今回は必要経費のみの支払いでいこうと意気込んでいたのだ。
ところが今回、協会費をご協力頂ける方の窓口が別になっていたのである。もちろんそちらは窓口が3つもあるし、手続きも一度で済む(協力いただけない方は、一つの受付窓口しかなく、しかも2種の手続きをしなければならない)のでラクチンかつスピーディというメリットはある。でもそれだけだ。2、3分待つくらいの忍耐力は、私だって持っている。
そしてもちろん協会費の支払いは任意であることも、繰り返しアピールしてくださった。公安が詐欺まがいの所業をしているなんて、と憤っていたのだけれど、いつしかカイゼンが行なわれたのだ。こころなしか罪悪感を溜め込まずにすむ職員の皆さんの表情も、和やかになったような気がする。
視力検査を受け(裸眼で正常値らしい)、講習室で待つ。交通安全のDVDを見せてもらう。いつものように、こんな映像であっても、ついのめり込んで見入ってしまう。子どもとお年寄りは左右の確認や安全点検は頭になく、常にわっと(もしくはふらりと)飛び出すことを頭に叩き込んでください。というような内容である。
それは経験上知ってはいるけれど、なにもそこまで、とも思う。とくにお子様に関しては、しっかりものの当事者に見せたら憤然とされるのではないか。子どもがひとりで飛び出すのを見たことはないが、集団下校なんかでは、仲間とふざけて車道に押し出されたりはあった。あれは確かにアブナかった。
お年寄り(に限らないが)は徒歩の方よりむしろ、自転車の方が厳重注意を要する。自転車を降りて左右確認をすることは、誰だって面倒なのである。もちろん自転車に乗りながら一瞬で確認なんて、不可能な芸当である。
そういえば受付のとき長蛇の列の途中に、震える手になにかの紙片をもったおじいさんがいた。まるで志村けんの「ひとみ婆さん」みたいだ(じいさんだけど)。
係員のおじさんが彼に、更新に必要なものを所持しているか、と何度も聞いていたが「え?」と繰り返したあげく、「ないんやけど」と答えた。彼は係員の方に丁重に別の場所に誘導されていったが、少なくとも彼は、更新手続き前の実技試験はパスしているのである。ひとみ爺さん、免許を更新して、運転は大丈夫なのだろうか? 彼のその後が、ちょっと気がかりである。