ビッグ・フィッシュ
この連休中にと思って先週借りたDVD、ティム・バートン監督の『ビッグ・フィッシュ』を午前中に見る。
2003年の作品だから、ずいぶん前の映画なのだけど、いつものようにあてずっぽでティム・バートン監督のまだ観ていない作品、という動機だけで借りたのだけれど、これが傑作!
相変わらず深いわ〜、バートン監督。わかりやすくて、シンプルで、ストレートで。可笑しくて、カラフルで、ワープする常識。でも言うに言われぬ人生の真実がちりばめられている。
父と息子の確執。余命少ない父と息子は和解出来るのか? という、あまりにもありふれたストーリーなのに、全然ありふれてない作品なのは、まさにティム・バートン監督ならでは。
主人公エドワードの人生は、魔女(個人的には大好き!!です。彼女の演技は「ザ・魔女」ですよ!)の予言や巨人との邂逅、サーカスでの危険な仕事の数々、戦地でのシャム双生児との逃亡など、ファンタジーでいっぱい。ロマンチックで一途な純愛と結婚だってある。
彼は、平坦で安全な道より、幽霊が出ると噂されるような、「決して入ってはいけない」と警告されている怪しい道をわざわざ選びとるチャレンジャーでもある。
おまけに魔女とも巨人とも狼男とだって、自由で対等な目線で付き合う。けっしておびえたり闘ったりしない(石を投げたりはしたけど)。困っている人を幸せにするためなら、自分にできる方法(彼にとっては「おしゃべり」?)を探し出して全力を尽くす。おまけに自分が「ソンをする」ことを全く気にかけない。
つまりとても「勇敢な」男なのだ。あまり世間は賛同してくれそうもないけど、私はこういう人を「勇敢」と呼びたい。映画では彼を「社交的」と言っていたけれど、それはほとんど「神!」とでもいいたいくらいにフレンドリーで楽天的で、自由で愛に満ちている「社交的」だった。
それから愛する人はひとりだけ。それが実はどんなに幸せな事か、というのをあらためて思い知りますから!
「君にはどんな女もぞっこんだ!」と言われれば、「いえ、ひとりでいいです!」と断言して、そのたったひとりの彼女獲得のために、あらゆることを実行してしまうエドワードに、いろんな意味でくらくらしましたよ。
セレブになった訳でもなく、名をなした訳でもない。でも出会った人たちは、みんな彼のことが大好きになった。エドワードのお葬式では、さまざまな場所から集まった人たちが、まるで旧知のように、そしてまるでパーティのように、楽しそうに彼のことをおしゃべりする。彼と別れるのが悲しいというより、彼に出会えて本当によかった!という気持ちの方がずっと大きいから。そんな気持ちを初対面の人たちとも、充分に分かち合える、かなり理想的なお葬式シーンだった。もしかしてお彼岸シーズンにもぴったりの映画だったかも(笑)
この映画はある意味、現実世界の完全なネガなので、ものすごく美しくて楽しくて善良で楽天的で愛に満ちている。そういうアイロニーも含まれているように思えてならない。
ネット上にあるこの映画のレビューをあれこれ読んでいたら、「ぜひ(元首相の)小泉さんに見て欲しい」という文章があって、なるほどと。暗喩と寓話もたっぷりなので、たぶん人によって、いろんな読み取り方ができる映画でもあるのだ。
もし機会があれば、ぜひどうぞ。おすすめです。