最終回の感想
病院に行く途中に本屋さんに直行し、『ダヴィンチ』を購入。そう、『テレプシコーラ』の最終回なのだ。
『テレプシコーラ』は、バレエ教室を開く母の元、バレエの才能溢れる(勉強もでき、おまけにしっかりもの!)姉を持つ、自信のない妹、六花ちゃんが主人公の少女漫画だ。第1部では、いかにも山岸凉子先生らしい、読者の胸をえぐるような残酷で痛ましいシーンが散見されたのだけど、第2部では大きなコンテストが舞台にも関わらず、むしろ穏やかに見ていられた。
いや、もちろんハラハラドキドキしどおしなのだけれど、胸を抉られることもなく、山岸先生には珍しいくらい(笑)、最終回も穏やかな着地を見せた。
六花ちゃんは、例えば初期のバレエ漫画『アラベスク』のように、バレリーナとして大成するとか、「バレリーナ」としてのアイデンティティを確立するというような漫画ではない。彼女は「踊ること」にも、もちろん努力してかなりのレベルにまで達するが、それがメインではない。「それも必要」な才能の範疇に入るコリオグラファー(振り付け家)としての才能だったのだ。
例えば野球のプレイヤーではなく、審判やスコアラーとして一流になるというのは、世間的にはあまり注目されない。でもそういう方面で類い稀なる才能を持った人を、球界では求めているはずなのである。
自分にどんな傑出した才能があるのかは、誰にもわからない。もちろん自分自身にも。それを見いだしてくれ、磨いてくれる人との、超ラッキーな出会いが伴わなければならないからだ。自分の才能を活かす仕事や場所があるかどうかすら、私たちにはわからないのかも。
そういえばこの最終回で、死者も和やかに生者とともに生きることができるのだと教えられる。死者とともに生きるからこそ、生者は自分の分以上に生きることにがんばれる、ということもある。
そしてそんな才能は、いつ開花するかもわからないのだ。60を超えて、70を過ぎてから自分の才能を見いだした人だっている。
水木しげる先生だって言っているじゃない。「人間は80を過ぎてからだ」ってね。希望をもって生きていれば、いつかわかる時がくるんじゃないかな。