クララでした。
おばあちゃんがポータブルを卒業した。
なんと気づいたのは今日だ。まるでクララが初めて歩いたのを目にしたハイジの驚きだった。「おばあちゃんが歩いた!?」
今日は夜勤務が入るので、お昼前に出勤することになっていた。朝ご飯の後片付けの後も、台所で今夜の晩ご飯のおかずをせっせと作っていた。マンガ風にいえば、頭の後ろから汗のシズクが3つほど飛んでいるような必死さだった。
後ろでガサゴソと音がきこえて振り返ると、おばあちゃんがいろんな場所につかまりながら、自力でトイレまで半伝い歩きをしていたのである。二足歩行でトイレまで行くのは、おばあちゃんにとっては大冒険じゃないか! しかもトイレまでは家の端から端なので、なかなか遠いのだ。(お屋敷なので。って、うそうそ)
しかしあの意気揚々たる自慢げな表情で「いつまでもひとのお世話になってるわけにはいかんし」と言われると、せっかくの意欲を阻止するわけにはいかない。多少のキケンは目をつむり、前向きな意欲を摘まないようにしなければ。生きる意欲とか自信とか尊厳は、いかにもお年寄りには大切だから。
年を取るとひとは子どもに戻るというけれど、まさにそのとおりだと思う。実に3番目の子ども、と密かにおばあちゃんのことを思っているのだ。子育ては、ほぼ卒業したと思っていたけれど、そうではなかったのだ。私が仕事から帰宅して(もしくは休日のとき)、家族で今一番喜んでくれているのは、たぶんおばあちゃんである。かつての子どもたちがそうだったようにね。