大胆、かつチャーミング
珍しく、ちょうゴキゲンで帰宅したKちゃん。
高校の芸術科目は3択で選択した。音楽、美術、書道どれかを選ぶのだ。私は絶対彼女は美術を選ぶだろうと思っていたが、念のため確認したら「書道」という。予想外の答えだった。
なんで美術でなくて、書道?
「美術はめちゃめちゃ上手い人、山ほどいるし、点数とれへんと思う。それに書道やったら、お歳暮とかお中元シーズンに、のし紙で筆文字を書けるから、アルバイトできるかもしれへんし」
さすが、抜け目がない女だ。
確かに彼女は、デッサンとか写実とかは好きではなく、技術的には上手い方ではないかもしれないが、彼女の絵には、技術を超えた魅力をもっているのに。子ども時代を通して絵画教室にも通っていたのに。ちょっともったいないなぁ〜。でもまあ、本人の意向なら仕方がないか。
ということで、書道を選択したのである。おばあちゃんに3年程、お習字の手ほどきを受けて入るものの、器用な上手さはない。素直な元気の良さが取り柄のお習字だ。それでも先生のご指導の賜物で、高校生になってから目を見張るくらい上達した。「うまい」というより、彼女のは「いい」(味のある、ともいう)字なのだ。
近々に「書道展」みたいなのがあるらしく、書道のクラスから代表3名を選ぶことになったらしい。Kちゃんの語りでは、こんな感じだ。
「10年くらいお習字してます!というくらいバリバリにうまい人が二人いやはって、その人らは当然代表なんや。ウチなんかはほとんど殴り込み(!)みたいな感じで書道クラス取ったやん? ほとんど論外なんや。
それで、展覧会に提出用の字は、先生が『めりはりのある字を書きなさい』っていわはったから、めっちゃ強弱つけて書いてみたねん。ほいで、ウチが筆を洗いにいって戻って来たら、(作品の乗った)ウチの机に人垣ができてるねん」
いわゆる「きれいな字」ではないけれど、やたら「面白い字」だったらしいのだ。
書道だって段があがるにつれて創作になってくるから、独自にクリエイティブでないと上には上がれない、という話を聞いたことがある。観察力と想像力と創造力は人並み以上(多少親バカ・バイアスあり)のKちゃんに、どうやら何かが降りて来たらしい。あるいは無欲の勝利でもあるのだろう。
母親としてより、むしろ10年以上前から彼女の作品の一ファンとして、うれしい話であった。これを機に、彼女のクリエイティブな部分が復活してくれたら、実にうれしいのだけれどね。でも「芸術は上手下手ではない」、という私の言っている意味が、彼女にも少しわかったかもしれない。