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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

紙魚子(しみこ)のおでかけのあれこれ、ユニークな家族、節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物などを書いています。

国芳はカッコイイ!!

以前の記事「紙魚子の小部屋」は下のリンク集から読めます。

 彼を、いつ好きになったのか覚えていない。覚えてはいないが、ミュージアムショップで気に入って買っていた浮世絵?の金魚や猫のポストカードやクリアファイルが国芳作だということに、徐々に気づいていったのだった。

 楽しくて可愛くてユーモラスな金魚や猫たちの絵の、「ホンモノ」をこの目でみたい!というのが、今回の目的だ。とともに、そういう絵を描いた歌川国芳という人の絵の全貌を見たい!という大それた野望もこっそり抱いてもいた。これらの目的は今回すべて達成されてあまりあった。それどころか歌川国芳って、私にとって理想的な男だった(あくまで絵から感じる情報だけですが)ということまで判明したのだった。

 動物に対する惜しみない愛おしみ。女性や子どもへのあたたかで寛容なまなざし。妖怪に対する好奇心とお茶目な想像力。描かれる人間や生き物(妖怪も含む)たちの表情の豊かさに、国芳の博愛精神を垣間みてしまう。

 一方、絵のカッコよさ(構図やデザインや色使い)への飽くなき追求や、西洋の絵や版画から学ぼうとする貪欲なまでの研究心に絵師としてのプロ根性や心意気にうっとりしてしまう。しかも、権力や圧力に屈しない、でもケンカ腰の正面対決じゃない、ウイットとユーモアにとんだ反骨精神を絵で貫く姿勢に大拍手。あくまでも江戸っ子で、庶民の側にいる明るい粋人なのだ。

 こういうものが、彼の絵から溢れていて、みているだけでドキドキしてくるのだ。これって、鯉、いや恋かも?

 国芳が脚光を浴びたのは、当時大ブームだった水滸伝の登場人物を描いたシリーズによってらしい。彼の描く水滸伝キャラは背中に派手な入れ墨をしょっていたので、入れ墨が大流行したというおまけつき。

 大胆な構図と対照的に、魚のウロコや着物の柄、豆粒のような人の表情にまで配慮した精緻さのため、一枚の絵を見るのに時間がかかることといったら! しかも細かい所で「あそび」が入ったりしているので、国芳のギャグを見逃す訳にはいかないと、必死に目を凝らす。油断も隙もない絵なのだ。

 絵の中に時間の流れる物語性も濃い。『大江山酒呑童子』という絵は、人間の外見に変身している酒呑童子が、徐々に本性であるオニに変わりつつある・・・というユニークな絵で、さしずめ漫画のようだ。かなりクオリティの高い漫画、えらく洗練されたポスター、そういう要素が国芳の絵にはある。

 動物大好き♡(とくに猫は溺愛で猫屋敷状態!!)な国芳が、ダチョウについてはこてんぱん、というのも可笑しかったな。「無駄にでかくて、場所をとるばかりで、何の役にもたたない」と罵倒され、ダチョウの絵の上に、カルタの絵札のように丸囲みで「駄」とあるのも可笑しい。

 それにひきかえ、愛猫が死ぬとお寺さんで位牌と戒名をお願いし、仏壇には猫たちの位牌がごっそりとあったらしい。

 あったらしい、というのは、普段は「純粋に絵画を見るさまたげになるから」(!?)まず借りない「音声ガイド」を今回は借りていて、そういう説明があったのだ。大事な部分の見落としを防ぐのと、補足説明のなかにきっとトリビアルなものがあるだろうという予感があったからだけど。

 プラス音声ガイドが山本耕史くんだった、というのも大きかったかも(笑) 一部だけど、江戸時代の江戸っ子気分を味わえる国芳の弟子、芳宗に扮して語るスペシャルトラック、なかなか貴重なのでした。

 その国芳が死した後、弟子の芳富が描いた『国芳死絵』の中の国芳は、タバコ入れに猫の根付けを付けているのだ。さすが国芳の弟子である。わかっている。きっと弟子にも愛された師匠だったのだろうな。

 

☆☆☆5月22日の『日曜美術館』(NHK教育:午後8時より)で『夢の国芳 傑作10選』(再放送)をされます。お茶目でむちゃくちゃカッコいい国芳を、ご堪能あれ。

☆☆☆夏には静岡(7月9日〜静岡市美術館にて、ほぼ1ヶ月以上)に、冬には東京(12月17日〜森アーツセンターギャラリー;六本木ヒルズにてほぼ2ヶ月)に巡回されますので、中部、関東方面の方々は、いましばらくお待ちください。