市長の名代は
地域活性化を目論む彦根市民団体と、来年創業100周年を迎える吉本興行のコラボで、彦根市&滋賀県民の一般人を交えた吉本新喜劇の上演があったのだ。
上演の前にある、えらい来賓や主催者の挨拶。これはたいがいにおいて、忍耐を強いられるくらいつまらない。それなのに、今回に限っては、たいそう面白かった。
まず、主催者である市民団体の代表者と、このイベントにおける吉本興業の代表者の挨拶があった。しかし、この、えらいひとたちが上がる舞台に、「ひこにゃん」がやってきたのである。もう、拍手喝采だ。当然、ほかの二人の3倍くらいの拍手だ。さすが「ゆるキャラ人気日本一」のひこにゃんである。地元でも人気者なのだ。
わたしも初めてお目にかかったが、その魅力でイチコロにされた。それはそれは愛らしいのだ。天下無敵の愛らしさ。皇室の方々のように、手を振ってくれるだけのパフォーマンスだが、思わず夢中で手を振りかえしてしまうくらいだ。いい年齢のオバさんが、である。
なぜこのような晴れがましい席に、ゆるキャラである「ひこにゃん」がやってきてくれたのか? それはなんと、驚くべきことに、彦根市長の名代なのである! やるな、市長! 本人がやってくるより、はるかに効果的なうえ、本人以上によろこばれる。
その証拠に、えらいひとたちが、一生懸命挨拶している後ろで、客席に小さく手を振ってサービスするひこにゃんに、客席のひとたちは、大ヨロコビで、一部は熱狂的に手を振りかえしていたからだ。
「人間 < 着ぐるみ」。「えらいひと < ゆるキャラ」。
ほとんどの客席のひとたちは、えらいひとの話は馬耳東風で、意識はひこにゃんに集中している。おそるべし、ゆるキャラ。ひこにゃんは、無言のカリスマだ。
土日のイベントには、市長は休日なので、ゆっくりしていただいたらいいのだ。ひこにゃんに代役をつとめてもらったら、三方よしで、すべてうまくいくのだ。彦根市は、なんという素晴らしい発明をしたのだろうか。いやー、ホンモノの迫力と魅力は、やっぱり違うわ〜。参りました。ひこにゃん、万歳。