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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

紙魚子(しみこ)のおでかけのあれこれ、ユニークな家族、節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物などを書いています。

小説の名手

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 小説の名手、という言葉を久しぶりに思い出した。

 次回の読書会の課題本が中島京子さんの『小さいおうち』で、ご存知直木賞受賞作品。現在鋭意(?)読書中なのだが、これがもう、じつに巧い!旨い!上手い! あまりの素晴らしさ面白さに、ひれ伏しながら読んでいる。

 老眼で眼力はしょぼしょぼだし、体力減退中なこともあって、新聞を読むと気分が悪くなるような最悪のコンディションながらも、これはガンガン読むことができる。

 若い働き者の女中さんが見た、戦前戦中の昭和に生きる東京のふつうの家族のなんてことない話なんだけど。昭和10年頃からの戦前、戦中までのところを読み終えて、現在は半ばを過ぎたあたり。

 キャラクター造形の的確さと妙、ストーリーの運び方、引用といい間違いの絶妙さ、ちょっとしたまなざしやしぐさの効果、まさに生き物のような会話、どれをとっても極上だ。人物たちのぶつかりあいや、せつない関わりとかも、まるで目の前で繰り広げられているかのようにリアルで、ドキドキ。

 なによりのカルチャーショックは「戦争」に突入していても兵隊さんを送り出していても、一般人は「普通に日常を生きている」ということ。戦争中の話なら生活は戦争に塗りつぶされ暗い影を落とされる、というのが常套なのだが、まず「生活ありき」「日常ありき」で淡々と話が進んで行く。

 しかも作者、および作中の日記の主である女中のタキさんのキャラ故か、とてもお茶目で気が利いていて、五感が全開になるような爽快感がある。そうタキさんは、学問や教養はないけれど、非常に鋭敏で利発なのだ。しかも自然に醸し出されるユーモアがあり、愛すべきキャラなのだ。

 それからタキさんが作るお料理のどれもが、とてもおいしそう。私的には千葉の落花生でつくる手作りピーナツバターや、野菜を混ぜて彩りよく焼き上げた手作りパンなんか、垂涎の的。ああ、タキさんのつくる朝ご飯を一度でいいから食べてみたい!と熱望してしまいましたよ。

 中島京子さんは、ずっとまえから読みたい!!と憧れていた作家さんなので、今回やっと読むことが出来、感無量。でもまだ道半ばだ。読書に我を忘れることができる幸福を、久方ぶりに味わって、とてもうれしい。