『A3』とあの時代。
ということで、たかだか30分ていどの「おでかけ」の話を、5日間に渡って繰り広げてしまった。
ところでこの「近江商人屋敷」の3館共通チケットは600円だった。これがお買い得でなくてなんであろうか。30分の駆け足で見て、これだけの収穫があったのだ。時間を気にせずじっくりたっぷりと見学できれば、きっと笑いがとまらないくらい「もうかった」感があるだろう。
話は変わって、本日の話題。
現在進行形で読んでいる森達也さんの『A3』が、講談社ノンフィクション賞を受賞した。しごく当然という思い(本当に面白いから。すばらしい取材!)と、よくも選ばれた(オウムとか麻原彰晃に関しての事実は黙殺されがち)という感慨と。講談社と賞の選考委員に、まず拍手。
地下鉄サリン事件以降の日本の変化を、(特に小泉政権時代、憤慨や恐怖によって)どきどきしながら、ほぼなすすべもなく悔しい思いで見ていたことを思い出した。それから村上春樹さんが『アンダーグラウンド』や『約束された場所で』など(エッセイや対談とかも)を書いてくれたので、オウムのことは考え続けないといけない、と心に焼き付けたこととか。
事件の頃には、まだ女性誌『CREA』は読みどころ満載で、ナンシー関と大月隆寛の対談が掲載されていた。鮮烈な記憶として残っているのが大月隆寛が破防法を是としていたのに対し、ナンシー関が「それはやばいんじゃないすか?」と頑としていたのが忘れられない。
だってオウムが、化学兵器のテロが、麻原が、と畳み掛ける大月隆寛にも、彼女は破防法は非と譲らなかった。私にとっての「ぶれない人」というのは、小泉元首相ではなく、ナンシー関だね。永遠に。
森達也さんの何ものにも惑わせられないまっすぐな視点や、自信なげで小心な筆致で、でもあくまで正直なこころには、いつもびっくりさせられる。
『A3』は「麻原彰晃とは、どんな人間だったのか?」という追求と、地下鉄サリン事件以降の日本の変容ぶりを危惧する様に、どきどき。まだまだ残り半分以上あるけれど、これはたしかにオススメ。
私がまだ仕事をしていた頃、図書館の本棚で『A3』をみつけて「これは絶対読まなくちゃ!」と当たりをつけていたけれど、まさかこのタイミング(私が図書館で借りている最中)で賞を取るとは。予約が付く前に読了しなくちゃ。