えんまカルテット
閻魔王庁の裁判制度についてのあらかたは昨日お話ししたとおりだが、えんまカルテットのメンバー紹介をしていなかった。
まず後中央で、杓を持ち睨みをきかせているのが、言わずと知れたリーダー、閻魔大王だ。その向かって右側で健筆をふるっているのが司録菩薩さま、裁判の記録係、すなわち書記である。閻魔さまの左で左手に巻子、右手に筆を持つのは、司会進行係の司令菩薩さまだ。
このトリオは作者が同一と伝わっており、前の二人は別の方の手になるらしい。共に鎌倉時代の作で、国指定の重要文化財だ。
一方、前面のふたりは、素晴らしくリアルで今にも動き出しそうなコンビだ。共に獣の敷物を座布団代わりにして椅子に座り、生前の人間の行いを記録している。(そして亡者が目前に現れたときには、この記録と亡者の証言を照らし合わせるのだ)
向かって右側が倶生神さま、巻物をひろげて悪事確認作業中だ。コワいのう。
向かって左側が暗黒童子さま、木簡に筆で記録中だ。コワいのう。
そして意外なみどころは、彼らの敷物だ!
木で造ったとは思えないような、その薄さやなめらかな毛皮感にも驚愕だけれど、自然にできた木目や節穴を利用して、動物の耳や眼や鼻の穴などを表現している。先生に教えていただいて近くで見た時には、鎌倉時代の技術の素晴らしさを遊び心で表現する仏師の姿勢に感嘆だった。
そうそう、忘れていたけれど地獄関係の話は、浄土系仏教(浄土宗、浄土真宗)関係者は除外されると最初に先生がおっしゃっていた。そうだった、そうだった。なら、地獄の心配はしなくてもよかったんだ。やれやれ。
これだけ地獄の話を聞いたら、浄土系仏教が庶民に熱狂的に受け入れられ、浸透したことも深く頷ける。地獄の話はかなり面白いんだけど、当事者になるのはちょっと・・・だもんね。