素晴らしき「間」の世界
今日の『カーネーション』は、芸人(志望者)さん、および役者(志望者)さん必見と思えるほどの、素晴らしい「間」の取り方を見せていただいた。
例の国防婦人会のおばはんが、店にやって来た。父は大やけど、自分は産褥期だし、おばあちゃんは火事の日に腰を抜かして以来ヨロヨロだし、母はしくしく泣いているしと、満身創痍の糸子の店に、だ。店中の反発の視線をものともせず。
「いまはぐちゃぐちゃですわ!」と吐き捨てるようにいう糸子に、一瞬ひるみ、心ならずもお見舞いの言葉をいったあと、「でも日頃のこころがけちゅうもんがあります。何事も因果応報。ご自分を見直す良い機会とちゃいますか?」と言い残して去っていく。
その後糸子はキレまくり、「二度とウチの敷居をまたぐなっちゅーたやろ!!」と丸いものを豪速球で戸口に投げると、丁度引き返して来た「おばはん」のおでこど真ん中にストライク!!
あ・・・
知らぬ存ぜぬを装い、立て膝で戻る糸子のナレーション。
・・・因果応報・・・
・・・ホント、この間合いは、ぜひテレビで確認していただきたい。
他にも火傷でうまくしゃべれない父・善作と糸子の通訳の間の取り方が、最高に面白い。もう、まるで落語のよう。共演者のおばあちゃん役の十朱幸代さんが手ぬぐいを口にあてて咳をされていたのは、もしかして笑いをこらえきれなかったのかも(笑)
その前にあった糸子と母・千代と父・善作の漫才(としか思えない!)もいい。父の不明瞭な言葉を通訳してくれる糸子に感心して、母、千代がいうこと。「やっぱり娘やなあ、おかあちゃんなんか、何言ってるかぜんぜんわからへん」
・・・って、あんた、彼の奥さんでしょうが(なぜわからん!?笑)
しかもいましがた「冷ませ」て聞いたばっかりやのに、糸子とのおしゃべりに夢中でうっかり熱々のおかゆを夫の口に(笑) こののほほんかあさんぶりに、なぜかどれだけ安堵することか。
大やけど演技熱演の小林薫さん、一分の隙無く神がかっているとしか思えない尾野真千子さん、のほほんかあさんの麻生祐未さん、サイコーです。国防婦人会のリーダー澤田役、三島ゆり子さんも、姿をみられなくなったら寂しくなるかも(笑)
しかし糸子のいいところは、あんな憎たらしいおばはんの言葉にも、ちゃんと耳を傾けることだ。「おばはんの言うことにも一理ある。自分の身を振り返らんと」まわりをしっかり見回し始めるのだ。そしてこれが次のステップへとつながっていくから、「人生どこに何がころがっているかわからへん」のだ。