ひっぱたかれた。
今日の『カーネーション』には、心をひっぱたかれた。
個人的には号泣ものの回。もう、渡辺あやさんには全面降伏です。中盤の戦争の時代の話ですら、あれは現代の話の寓話も入っていたのかもしれない、と思えるくらい、スルドイ。
今回も「おもろい」という言葉を、こんな深いポジティブさで使うなんて。思えば、糸子が百貨店のデザインの見本を作ったとき、父・善作は「それ、おまえ、着ていけ。その方が、おもろい!」って言っていたっけ。「おもろい」というのが、善作と、彼のDNAを受け継いだ糸子の生きる指針となっている。
今日も糸子は、「東京へ行くんか、岸和田に残るんか、どっちがおもろいか」と悩んでいる。長女の優子に「なんで東京に行きたがるのか」と訊くと、彼女は目を輝かせて「東京を拠点にして全国に店舗を広げて、売り上げを何倍にも伸ばして」と夢を語るが、糸子にはそれが「おもろい」ことには到底思えない。
お茶の間で珍しく糸子は気弱に語る。
それ(モード)は新しいゲーム、戦争と一緒。・・・しんどいやろ、ゲームって。みんな敵ばっかりで、みんな、のぼせあがって。
そこで、とてつもなく懐かしい名前が! 善作が頼み込んでくれたおかげで、糸子に洋裁を教えてくれた根岸先生。彼女が糸子に叩き込んでくれたのは、洋裁のテクニックだけではなく、仕事に対するシンプルな哲学と目標だったことが、再認識される。
「ホンマにエエ服は人に品格と誇りを与えてくれる…人は品格と誇りを持って初めて希望が持てるようになる」
なのに
「去年最高に良かった服が今年はもうあかん。どんだけええ生地で丁寧にこさえたかて、モードが台風みたいに全部なぎ倒してってまいよんねん」
「人に希望を与えて簡単にそれを奪う…そんな事、ずーっと繰り返してきた気するんや」
「あかん。…愚痴になってしもたな。…年やな」
それを聞いた八重子さんが「情けないわ!!」と激怒し、ぽかんとする糸子を残して飛び出して、まもなく戻ってくる。この、戻ってきた時の八重子さんとシンクロする、駆けて小原家に飛び込む揺れる目線のカメラがドキドキもの。
「うちの宝物や!」と八重子さんが胸に抱えたふろしき包みを広げて見せたのは、糸子が作った安岡美容室の制服と戦後ふたたび安岡美容室としてオープンしたときに糸子と一緒にスタッフ一同制服姿で撮った写真で、これにかぶる八重子さんの言葉に、心は号泣状態。
「ボロボロやったウチに、ウチとお母さんと奈っちゃんに希望と誇りをくれた大事な大事な宝物や!ウチはこれのおかげで生きてこれたんやで!!」
娘たちの前進する話の間、時代に取り残されそうになったり、時代と歩調を合わせるべく、娘たちのデザイン画で「勉強」したりしても、糸子の前進は70年代はさほど目を見張るものはなかったのかもしれない。
停滞し、引き際を考え、老いに近づく。走りつづけ、馬車馬のように仕事仕事だった日々も、疲れが目立つようになり、夜にはどうしようもなく、ついついごろ寝に。
そんな糸子の目に、久しぶりに強い光が宿ったのだ。
八重子さんの言葉を聞いて、「昔の自分にひっぱたかれたみたいでした」と。再度、彼女自身の新しいステージが始まる。
年齢的にもシンクロしているので、感情移入しまくってしまった。これでもかと言葉を尽くして説明する台本ではないので、なにがどう、というのは判らないひとには判らないだろう。でも、言葉を越えた所にある力強い感情は、きっと多くの人に伝わっているような気がする。すごいです。