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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

紙魚子(しみこ)のおでかけのあれこれ、ユニークな家族、節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物などを書いています。

合宿読書会!

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 デイでウチにひとりというのは、気持ちに余裕ができる。そんな日の今日こそ読書会の課題本を一気に読もう!という、何度目かの計画を実行しようと思ったのに、午前中はテレビ三昧(汗)。余裕は油断につながるのだ(苦笑)

 テレビ三昧といっても、見たのはたったひとつ。2時間番組だ。しかも映画ではない。

『BSアーカイブハイビジョン特集 シリーズ 恋物語

  「”虞美人草”殺人事件 漱石 百年の恋物語」』

 5年も前の番組のアーカイブスでの再放送だが、引き込まれる引き込まれる! さすがATP賞テレビグランプリ2007優秀賞受賞作品。

 黒谷友香(「カーネーション」でサエ役のひと)がヒロイン役で、夏目漱石の『虞美人草』の朗読劇が挟まれるディスカッションだ。原作の理解を助けるためのドラマだけど、手が込んでいてキャラも魅力的。黒谷さんのヒロイン藤尾、キレイ過ぎ! 他のメンバーだって、はまっているはず(原作を読んでいないけど、イメージ)

 『虞美人草』は夏目漱石新聞小説だが、現在ではどうも失敗作とか駄作などといわれているらしい。ところが、連載当時は大人気ベストセラーで、誇り高い才色兼備のヒロイン藤尾は「エースをねらえ!」のお蝶夫人にように女子の憧れだったとか。小説での藤尾は自分にヘイコラする男を選び、彼には自分にひれ伏すことしか許さない。そう、傲慢でキケンな女だ。

 この小説は連載中から賛否両論あり大騒ぎだったらしく、作者の夏目さんはちょっと腐ってしまい『この小説をわからん素人がなにいってんだか』『はやいこと終わらせたいや』というようなことを、ぼやいていたとか。

 そんな文豪のちょっとマイナーな小説を、ひとくせもふたくせもある個性的な面々が集い「“虞美人草”のヒロイン藤尾を殺したのは誰か?」をテーマとする謎解き読書会が開催された。番組は2時間だが、集った人たちは温泉旅館に合宿で、ゴハンや休憩やイッパイ飲む時間を挟みつつ、体力を消耗しながら対話を続ける。たぶん午前中よりスタートし(始めの方は見逃したので)、終了は日付を越え深夜2時に及ぶロングラン読書会を展開して行く。出演者は以下のとおり↓

 小森 陽一(東京大学教授・文芸評論家)

 小倉 千加子(心理学者・カウンセラー)

 島田 雅彦(小説家・法政大学教授)

 岩井 志麻子(小説家)

 斉藤 環(精神科医・評論家)

 黒谷 友香

(ドラマ部分・黒谷 友香、上野 なつひ、石川 佳奈)

(朗読・長塚 圭史)

 ひときわ光っていたのがフェミニストで心理学者の小倉千加子さん。キラ星のような名言と洞察に、感嘆の沈黙とメンバーの共感を浴びてらっしゃった。きっちりとテキストを読み(たぶん)漱石についても調べあげられたはず。また、長時間頭を回転させ続けるパワーはさすが。

 彼女の意見では藤尾殺しの犯人は、男性たちのABC包囲網であると。

 結論だけ書くと、「やっぱり小倉さんはフェミニストだから」と安直に受け取られそうだけど、それまでの過程は鮮やかで論理的かつ詳細に検証済み。学者さんだからね。異論は出ず。

 というか、結論づける頃には他の方々は疲れちゃって、「もうどうでもいいし犯人・・・」的空気がなきにしも〜?? 小倉さんの体力勝ちか〜!?

 彼女に共感しつつ、ついていけてるようにみえるのは、小森陽一さん。

 島田さんはちょっと「逃げ」がみえるね。もう、疲れちゃったよ。それより、はよ酒飲みてー的な(笑)

 岩井志麻子さんは「NHKだから私の得意なシモネタとエロ話が封印されるし、かつてないほどスベリまくり〜」と嘆いていらっしゃった。(「え?けっこうしてたよ」という声が男性陣からこっそり飛んでいた。シモネタとエロ話は、もしかしてカットされたのか?ちょっと聞きたかったかも)

 でも彼女の「岡山では、『おとなしいヤツほど屁が臭い』っていうのがあって・・・」発言には、疲れ気味の一同が、にわかに活気づきましたよ〜。彼女のこの場でのスタンスは、すべる室井佑月なのか(笑)

 これ、漱石には珍しい恋愛小説で、元祖ひきこもり的キャラや、BL(無理矢理!?)に読めなくもないキャラたちもあって、そのへん可笑しくもあり。

 以下は、この日の小倉千加子語録↓

 本当にわかってくれる読者は恋人と一緒だから、漱石も真剣に恋愛できてれば小説なんか書かないんじゃない?

 漱石は心理学をわかってる。相当心理学を勉強したはずです。だから心の奥底の自分というパンドラの箱を開けてしまった。それが藤尾。

 漱石が女性になったら藤尾になってしまう。

 自分の中の「女性性」を発見し、それと向き合えたのが漱石(の立派なところ)。真面目に、真剣に自分と向き合った人。(男性に必要なのは、自分の中の女性性を大切にすること、それが現実の女性を尊重することにつながる、というようなこともおっしゃっていたような気もする)

 真面目に人と向き合うっていうのは、真面目に自分と向き合うっていうこと。つまらない自分と向き合うのが怖いから人と向き合えないのではないか。だって自分がつまらなかったらつまらない人としか出会えないよね。

(『虞美人草』とは?と聞かれて)

「偉大なる失敗作。漱石にとってのフランケンシュタイン」 

 『週刊ブックレビュー』も終わっちゃうし、こういう番組、もっと見たい!30分でも15分でもいいからね。