21世紀の病院だった。
「まずは涅槃図だ」といっておきながら、涅槃図を見る話は次回にして、今日のできごとを先に書こうとする、いい加減なヤツです。スミマセン。
「木曽路はすべて山の中である」というのは、島崎藤村の『夜明け前』の冒頭だ。滋賀県では大学病院も県立図書館も、県立美術館も、おしなべて山の中にある。滋賀県では医療も知識も感性も、すべて山の中である。「文化ゾーン」と銘打たれている、そんな大学病院へ行ってきた。いや、ほんの3日前にも行ったのだが。
今年に入ってすぐ、実家でそういう話が出ていたから急なコトでもなかったのだが、先日、実家の父が大学病院に入院して、本日片目を手術。もっとも本人の自覚が無いくらいの病状だから、入院していても手術前まで、いたって元気だった。
手術は1時間もしないうちに無事終了。内蔵がどうこうではないので、早速今夜から食事可能だ。
手術後もべらべらしゃべっていたので、とても手術直後の人には思えない。
それも、まもなく80にならんとするのに、老人老人してないのはスゴイが、単にボケている(認知症とかではなく、うっかりの方)のか、いけずな嫌がらせなのか不明な言動多し。外見も中身も、昔からのまま変わらない。
運良く初期症状で、たまたま医者に病気を見つけてもらい、失明をまぬがれることができた。まったくこのひとは、運だけはいいな。
その病院は、H氏が以前ヘルニアの手術をした病院であるが、リニューアルして?ずいぶんキレイになっていた。
ローソンも入り、雑誌の品揃えはちょっとした本屋さんだ。スイーツやお弁当の品数も多い。カップ麺も質・量(カップの大きさが大・中・小とある)共に、セレクトショップのようだった。町のコンビ二より、はるかに充実しているかも。
ちいさなアレンジメントが可愛らしく飾ってあるフラワーショップだってあった。こんなしゃれた花屋さんは、前はなかったぞ。
しかも上階の入院病棟にあるくつろぎスペースには、大画面のテレビと自販機がある。いや、それくらいはどこでもあるが、全面ガラス張りの窓?から戸外を見れば、オーシャンビューならぬ、レイクビューだ。琵琶湖がきれいに見えるのである。さすがは滋賀県の大学病院である。これもかつてはなかった。
でも驚きは、4月9日にオープンするという展望レストランだ。ポスターがあちこちに貼られていたのだ。そしてポスターの写真には、ナイフで均等にカットされたあつあつのビフテキが・・・(涎)
食餌療法している方にとっては、眼のやり場に困るポスターだろう。
病院というより、ホテルに近い。そういえば玄関だって明るくてホテルっぽい。病気、検査、手術という陰鬱な気分をバカンス気分に変換してくれそうだ。少なくとも、病人でない私は、少なからずテンションがあがった。
そういえば、父は先生から、手術中に聞きたいCD(カセット)があれば持ってきてください、と言われていたらしい。しかも、もし用意がなければ、病院側で用意してくれるそうだ。
うーん。東京の「山の上ホテル」は「文化人のホテル」として有名だけど、滋賀県の山の中の病院は、「文化ゾーンのホテル」「病人のホテル」みたいだ。
21世紀になったら、どんな夢みたいな世界になるだろうかと子どもの頃は思っていたけど、こんなところに20世紀に夢見た未来世界があったとは。悪いことばかりではない。長生きはするものである。って、お年寄りにはまだ早い私がいうのもなんだけどね。