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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

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喝!入りました。

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 ぬるい毎日を送っている私にとって、ぼこぼこになるような、恐ろしい番組を見た。NHKの再放送、

『心を鍛える音楽道場 〜指揮者・広上淳一と弟子たち〜』

         総合テレビ 5月4日(金・祝)前10:05〜10:48

 内容はこんなのです↓「NHKブログ」より引用

 1振りでオーケストラを動かし、極上の音楽に仕上げる指揮者。指揮者は何を見て、何を感じ、どうオーケストラをまとめ上げるのか? 今、東京音楽大学の指揮科が、ユニークな指揮者養成カリキュラムで注目されている。指導するのは、世界の舞台で活躍する広上淳一さん。広上さんが何より重視するのは、指揮者本人の「人間力」。学生に実際のオケを指揮させる“合同レッスン”では、「どんな音楽にしたいのか」「指揮とは何か」を徹底的に考えさせる。番組では、世界のマエストロと若き指揮者との真剣勝負の現場を密着する。

 広上先生の第1期生で、現在は名古屋フィルの若き指揮者・川瀬 賢太郎さんは、音大生の頃、いつも追いつめられて、逃げ出したいくらいの崖っぷちに立っていたらしい。

 印象に残っている先生の言葉は、「クリティカルでなくクリエイティブに」、「オケには興奮させるけど、自分はクールダウンしていなくちゃ」。

 そして広上先生がアツく語るのは、

「指揮者に必要なことは何よりも人間力。それに(指揮で音楽性を伝えることができる)コミュニケーション力。

 プロフェッショナルな演奏家たちを音楽的に納得させ、魅了するような、ものすごい力が指揮者には必要。それだけの力を出すには、指揮台の上では自分をすべてさらけ出すことになる。

 自分の心と常に対峙し続けることが大切。失敗を恐れちゃ前に進めない。とにかく動く。敵はいつも自分の中にいる。」などなど。 

 生徒はいつも、ギリギリの場所に立たされ、追いつめられる毎日だ。日々成長し、変化することを求められる授業。命を削るような渾身のエネルギー、自分だけの豊かなオリジナリティ、自分の全てを捧げるほどの音楽への愛。生徒たちからそれらを引き出すべく、先生は、満面の笑顔だけど、厳しい言葉で矢継ぎ早に質問を放ち、生徒を追いつめ続ける。

 生徒を指導するのは先生だけではない。現役でプロのオケにいる、それも一流の演奏家の耳の痛くなるような講評も聞かなくてはならない。広上先生にふられた百戦錬磨のバイオリニストは、穏やかな口調で、うなだれる生徒に言うのだ。

「広上先生はやさしいから、いろんなことを言ってくれるけど、プロのオケはみんなニコニコしながら黙っているよ。何も言ってもらえない。プロはここより100倍厳しい世界なんだよ」

 褒められることは、まずもってない。そんな逃げ出したいような場所にいられるのは、「とにかく音楽が好き!」という一点のみ。

 

 こんなに過酷な授業なのは、指揮者という仕事に求められるものが、最終的には「技術」ではないからだ。それは「自分自身を100%生きる」ことを目指しているように見えた。

 生徒たちは卒業課題のヒントを得ようと、京都で広上先生の指揮をむさぼるように凝視する。彼らの視線の先にあるものを見て、全身全霊、という言葉を実感した。自分の全てを投げ出して音楽に変換する。先生の指揮ぶりは、まるで音楽そのもの、と学生が言っていたように、広上先生の指揮はブリリアントで、一気にもっていかれるくらい魅力的だった。

 いや、彼は普段だって、ものすごくブリリアントで魅力的なのだ。なぜなら言葉も物腰も表情も、どきどきするくらい「生きている」人だから。逆にいえば、全身全霊で生きないと、指揮なんてできないのかも、とすら思う。

 それにしても彼らは、なんて過酷な道を歩むのだろう。「自分探し」とか「自分磨き」なんて言葉がちゃんちゃら可笑しいくらい、修行僧のように、見たくない弱くてどうしようもない自分を、真正面から見つめ続けなければならないのだ。その上、そこから常に1ミリでも前に進まなくてはいけない。立ち止まることは許されない厳しい世界だった。きっとそれが真実、「生きる」ということなんだろうなあ。

 

 でも「100%燃焼して生きる」という世界は、凡人が決して知り得ないブリリアントに満ちているのだろうな、きっと。