スキップ
「スキップ」は北村薫さんの長編小説だ。来週の読書会の課題本で、これを渡された時には、心の中で正直小躍りした。すでに10年以上前に読んでいたのだが、大好きな小説なのだ。
お昼寝から目覚めると、17歳から四半世紀の時をスキップして、42歳のベテラン教師になっていた真理子。しかもとうに結婚し、同い年の高2の娘までいるのだ。混乱と絶望と悲しみのなか、好奇心と自尊心、それに豊かな茶目っ気を持って、少しずつ「この世界」へチャレンジしていく。彼女は家族の援助を受けつつ、「からだは42歳、こころは17歳」として、25年先の「未来の自分」を生きることを決意する。せつない、でもカッコイイ。
主人公の真理子さんは、実にカッコいい。失った自分の25年分の時間を悲しみながらも、現実を見据えてまっすぐに歩く。ひどい状況にも関わらずユーモアを忘れない。心でお茶目なツッコミをして、青空のように爽やかだ。それは彼女自身は無自覚だろうけれど、どこかに階段の踊り場のような余裕を持っているからだろう。
そして彼女をとりまく人たちも、ラッキーなことに気持ちのいい人がほとんどだから、気分よく読みすすめられる。
北村薫さんは、もともと国語の教師だそうで、真理子先生の素晴らしい授業は、北村先生譲りなのだろう。彼の授業を受けた生徒(「ラーメンズ」の片桐仁、「演劇集団キャラメルボックス」の西川浩幸がいるらしい)たちがうらやましー!
文庫で500ページ以上もある長編なので、読み切れるかどうかが多少不安だったけど、読みかけたらぐんぐんページを繰って行ける。楽しく面白く、しかも元気になれる極上の小説。