木地師の里は別世界!
君ヶ畑に到着。山、茶畑、ススキ。降りた途端にいきなり感動! 実のところ心の中では「キャー! キャー!」とギャルのように黄色い声を上げていたのだ。
太陽の光が、山にかかったり
陰ったり、自然のパノラマが展開する。
ススキの原のお出迎えで、日本昔話の挿絵のような風景が繰り広げられる。
さざんかのようなお茶の花も、平地よりよほど大きく沢山付いていた。そういえば、この辺は皇室にも献上されている政所茶の産地でもある。
感動醒めやらぬまま。木地師の作業所を見学する。手づくりっぽい木と浪板で作られた作業所に、ぎっしりとおばさまたちがすし詰め状態になる。入口には材料となる厚い板が立てかけてあった。
材料はトチノキやケヤキなど。同じ物を50個つくるそうだが、なにしろまず材料の調達が難しいので、そこに時間がかかる。
とりあえずここまでの形にして、5年間乾燥させる。その間に木に「反り」が出てくるので少しずつ調整して削るそうだ。現代人のスピード重視とは正反対の仕事で、だからこそ魅力的だ。
とにかく5年間も乾燥させるのだから、至る所に器の原型が積み上がっている。床は通路以外にはぎっしりと。窓際にも、梁にも。
そんな手間ひまのかかった、木目の美しいお盆。自然の木肌が、なによりの模様と装飾になっている。
作業は実は工具から手作りで、木地を削るのに使い勝手のいいような特殊な刃のついた道具作りから始まるとか。「鍛冶屋さんもせにゃならんのですよ」と、案内してくださった木地師さんが笑いながらおっしゃっていた。自給自足。やはり、日本昔話の世界だ。
これほどの人目の中での作業は、(見学用の作業としても)大変だろう。しかし、朴訥ではにかんだ笑顔が、この地にも職人さんとしてもイメージどおりの誠実で実直さを表していた。これがセールストークのように立て板に水だったら、台無しである。
林業だけでは食べて行けないです。材料費や人件費だけでいっぱいで、儲けが出ないんです、とおっしゃっていた。きびしい現実だ。
ついで、その完成品の数々を見せていただくことになり、場所を移動する。
風景だけでなく、あのなんともあかるく美しい空気感をお届け出来れば! と痛切に思う。残念ながら写真ではとても伝わらない。