兵どもが夢のあと。
岐阜から大垣行きの電車に乗り込む。大垣駅は樽見鉄道や養老鉄道の乗り換え駅なので、交通の要所でもあった。駅自体は、そんなに大きくはない。
ちょっとだけ駅の外に出てみたけど、電車の時間が迫っていたので、次なる米原行きの電車へ。
大垣〜米原間は、山並みといい感じの田んぼが続く、のんびりとした車窓だった。裸の樹々は枝の先から紅色に変わっていて、芽吹きや開花を予感させる、ほんわりした気配を漂わせていた。
この路線では無人駅も多いみたいで、車掌さんによる車内でのキップの確認があった。たまたまボックス席になっていた私の前のお兄さんと、私の隣にいたおねえさんと私の、全員が青春18キップを差し出したので、ちょっと可笑しかった。
この「青春18キップ」の曲者ぶりは、自由に途中下車できるところだ。この米原までの長閑な路線で、ふとわき起こる好奇心を押さえる事ができなかったのは、青春18キップの為せる業だ。
そう、たぶん日本中の人が知っている地名「関ヶ原」の駅で、下車してみたい!という好奇心である。古戦場という観光資源を持つ関ヶ原の駅、および駅舎、そして駅前はどんななのか? 興味は尽きないので、このさいエイッと降りて見る。ホームを見た限り寂れた感じだが、数人の人たちが下車した。地元のお年寄り数名と、学生らしき若い女子たち。
古いコンクリートの階段なので、やや利用しづらい。オールコンクリート仕様ですり減っていた。ただならない辺境感だ。
改札を通って、せっかくなのでJRの駅スタンプを押しておこうと思い、狭い駅を見回すが見当たらず。小さな改札にひとりだけいた駅員さんに訊ねると、
「申し訳ありませんが、ないんです(汗)」とのこと。
ええ〜っ!? 日本人ならだれもが知っている地名なのに!?と、ショックを隠しきれない。 思わず「ないんですか!?」と聞き直してしまいましたよ。
気を取り直して、駅の外に出てみた。バスのターミナルすらなさそうだ(汗)
いや、あるのかもしれないが、バスは1台もない。もちろん、食堂はおろか、喫茶店らしきものもみあたらず。
駅舎の出入り口はこんな感じ。極めてシンプル。
駅の向かいには、かろうじて観光案内板があるのだが。
うう〜〜ん・・・(汗) ・・・あ、観光案内所は?
「あまちゃん」の観光協会より小さい!? いや、それはいいとしても、開所時間が午前9時から午後2時頃、って!? 閉まるの早すぎ! それに2時「頃」って、「頃」って・・・(汗)
2階が「ポーラ化粧品」っていうのも、なんか切ない。
案内所が掲げる看板には、この地の売りとして「伊吹山」「関ヶ原鍾乳洞」「関ヶ原ウォーランド」と、結構な観光資源があるのに、なぜ?
ああ〜、そうだ、「あまちゃん」で大吉さんが目の敵にしていたモータリゼーションだ! みんな車で来るから、駅前がこんなことに。ごく遠方からやってくる歴史好きの人たち以外は、鉄道を使わないんだった。
しかたなく、シャッターの閉まった観光案内所に貼ってあったポスターの写真を撮る。
風も冷たくて屋内に避難する場所はないのかと見回せば、1軒、ちいさなお店が。
よし、いってみよう。
(つづく)