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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

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ときめき物件の核心へ。

以前の記事「紙魚子の小部屋」は下のリンク集から読めます。

ついに憧れの角屋2Fへ。『日本建築集中講義』で、藤森照信先生と山口晃画伯を夢中にさせた物件を、ナマの目で観られるとは♡♡♡ ちなみに2Fだけの入場料は800円なり。

 まさに、「天国への階段」だ。スタッフさんが「急な階段ですので、お気をつけて」と気を遣ってくださるが、寺院の三門や楼門の階段に比べたら、楽勝です〜♫

 ここからは撮影禁止なので、写真はなし。でも角屋のカタログ(?)『角屋案内記』(角屋十三世の中川徳右衛門/著 長松株式会社文芸部/発行)を購入したので、少しだけ画像をお借りします。

 まず「緞子(どんす)の間」の案内から。このお部屋には入れず、床の間などは遠くから眺めるだけ。障子や襖の腰板には緞子が貼ってあるので、「緞子の間」と呼ばれている。もっとも緞子は煤で黒く変色しているので、模様などもあまりよくわからない(亀甲形が、かすかに認められた)。特筆すべきは、釘隠しが七宝でカラフルだったこと。初めて七宝の釘隠し、みました。付け書院の障子のユニークな模様は、「立涌(たてわき)模様」というのだそう。それ以外の障子のデザインだって、実におもしろい!

 次は「翠簾(みす)の間」。一カ所だけほんとに新しい御簾が掛かっていたが、あとは襖に御簾が描かれている。斬新かつユニーク、だけど雅びな襖だった。しかも引き手は角屋の家紋で、欄間は雷模様(現地ガイドでは「ラーメンの鉢の縁にある模様」と説明されていた)で、釘隠しは菊紋。

 「翠簾(みす)の間」は2間あり、もうひと間の床の間には、紫檀の曲木や「虫食い丸太に金の刷り込みを施したもの」を使い、壁は金箔という豪勢なものだ。紫檀の曲木だけでも、目がくらみそうに高価なものだとか。

 そしてそして、ついに観たかった物件のひとつ、扇の間。ここの意匠がもう!

襖の引き手、欄間、障子窓、天井までが扇尽くし!! 天井の扇面は、有名な絵師の絵や歌人の詩歌を58枚貼り交ぜてある。(そのためメンテが大変だったとか)

 襖絵は源氏物語の有名な場面を描いたもの、釘隠しは「源氏香」の図柄だとか。「源氏香」とは、香道における源氏物語にちなんだタイトルをお香の名前にしたもので、それを記号化したものらしい(詳しく説明してくださったのに、うろおぼえ・・・汗)

 壁土は自然の浅葱色で、九条土というらしい。新撰組の羽織の段だらの色だ。

 正面の襖を開くと高座になり、宴会などで浄瑠璃が語られた。なんて文化的な宴会だ。

 その後、いくつかのお部屋を案内していただいた。「馬の間」とか「梅の間」とか「孔雀の間」とか。とりわけ斬新だったのが、「檜垣の間」だ。天井、欄間の組子、障子の腰板などに、檜垣組が施されている。

 しかし目を見張るのは、檜垣づくしだけではない。障子の組子は一木で波形に作った竪桟(たてさん)と、横桟を一本おきの吹き寄せとした意匠だ。この波形の竪桟は、観る場所を変えると、波の向きが逆方向になる。目の錯覚を応用したものだそうで、見学者全員から感嘆の声があがった。

 ラストは、いままでとは全く異なる中国風の「青貝の間」だ。

 本来は九条土の壁で浅葱色なのだが、煤で黒くなっている。ゆるく編んだ蒲筵(がまむしろ)の天井も同じく黒い。しかし一面、この煤のおかげで表面が保護され、劣化をまぬがれているとも言われている。

 その黒い壁や建具一面に青貝が散りばめられ、妖しい光を放っていた。青貝とは螺鈿細工のことだが、壁に直接螺鈿をはめ込む技法は現在伝わっていないので、メンテは不可能とのこと。かなりの腕を持った職人の手仕事らしく、本来は職人仕事は無名なのだが、これを作った職人は、その当時も天才的な才能を買われたのか、しっかり名前が記されていた。サインも螺鈿で!(笑) たぶん螺鈿のサインってそうそうないと思うので、かなりのレアものだ。

 「こんなお天気のいい日には螺鈿がキラキラ輝くので、皆さん、とてもラッキーですよ」と、ガイドさんがうれしそうにおっしゃっていた。「雨や曇りには、こんな風に七色に光りませんから」

 螺鈿はよほどの美意識のある職人じゃないと、単なる成金趣味のギラギラしたものになってしまうが、まれにセンスのある職人仕事をみると、その上品な佇まいに驚いてしまう。以前、白洲正子展で螺鈿細工を施した容れ物を見たが、そのとき初めて螺鈿の美しさに魅了された。螺鈿に打たれたのは、あれ以来かもしれない。

 庭に面しては「露台」と呼ばれるベランダがあり、そこに桜の枝が伸びていて、シーズンになったら申し分のない天国になりそう。山口画伯もこの露台で寛げたら・・・とうっとりされていたが、残念ながら露台には出られない。

 あと、「青貝の間」には、もうひとつの見どころが。

 なんてポップ!としか言いようが無いですね(笑) 

 横長の窓は、松皮菱組の明障子を嵌殺(はめごろし)にしている。欄間は隅丸矩形、ハートの形でもある(中国の)団扇型、扇形と、三つの異形窓がある。当時の最先端の建築デザイナー魂に、思わず萌える。