「獅子と狛犬」(後半)
普通は二体で一対のものを「狛犬」と呼んでいるけれど、実は「角のあるもの」を狛犬、「ないもの」を獅子と区別しているらしい。
それにしても、各カテゴリー初頭に掲げられたパネルの筆者の、自信なさげな筆致ったら。「狛犬についてはいまだ不明なことも多々あり」「後の研究を待ちたい」。要するに、長らく学問として認められていなかったらしく、途上の学問らしい。
正直、前半はわりに見慣れたタイプのものが多くて、夫婦でツッコミ大会をする。「あっ、コイツ、極悪なやつや! 隣の阿形のは単なるチンピラな乱暴者やけど、吽形のは、何考えてるかわからん腹黒い笑みを浮かべとる」。わりと悪党面!?率が高かったかもしれない。(個人的には愛荘町の掌サイズのペアと、円空作の悪辣面が好き)
ポスターにもなっている、シャープで直線的なペア�Hは、平安時代後期のもの。肋骨が浮き出て、足も肉球のあるべき足裏部分が異様に小さくて、カラダを支えるのがつらそうだ。だからあんなに硬直しているのかしら?
そうそう、片方人面の狛犬?がいたけど、どこかのブログで「諸星大二郎のマンガにあったのとそっくり!」と書いてあったっけ。そういえば、魂の抜けたような、人情のない表情が、諸星さんの描く霊獣や妖怪っぽい。あれはなかなか異形な美しさがあったっけ。
しかし「百聞は一見にしかず」というくらいだから、画像がないと伝わらないものがある。ダメ元でネット検索したら・・・見つけましたよ!
印刷会社アインズさんの製作しているウェブ版「滋賀ガイド」での、ミホミュージアム/「獅子と狛犬展」紹介のアルバムが!
それも、私が「これっ!!」と目を付けたものを綺羅星のごとく掲載してあり、えらいぞ、アインズさん!!とおもわず激賞してしまったくらい。というわけで、上のリンクでぜひ写真をご覧ください。
アルバムには、石灰石を掘った随時代(6〜7世紀)の獅子像�Gもあった。これはH氏が「赤塚不二夫のマンガに出てきそう」と評した、「困ったのう〜」という表情のナサケナイ獅子である。
鎌倉時代になると、狛犬たちも非常にマッチョに変貌する�M。運慶快慶の仁王像のようだ。威嚇するような表情も、やはり仁王門の仁王さまの役割と同じく、境内の大事なものを守ろうとするためだろう。そうそう、狛犬も仁王同様、阿形(宇宙の始めを示す)と吽形(宇宙の終わりを示す)の口をしている。
今回の私の一押しは、特別出品された双吽(2体とも口を閉じている)の木造狛犬だ�R。朝鮮王朝時代の半島で作られたものらしい(実は不明)が、なんとなく沖縄っぽい南の風を感じる作風だ。眉毛こそは巻き毛だが、頭髪?はなんと、オールバックで直毛のアゴヒゲもある。
全体の印象は、「オールバックで鼻歌レゲエを歌う狛犬」。会場内でも、とりわけ異色のペアだった。出色の特別展示品だ。
それから出口付近で待ち構えている、円空の狛犬�Oが小さいけれど面白い。さすがは円空。円空仏の特徴となっている光背のギザギザがタテガミに転用され、カラダの大胆な渦巻き模様もダイナミック。
阿形の歯を剥いた口が、マンガ「へうげもの」で古田織部が企みを成功させたときに見せる表情にそっくり!(わかりにくい喩えだ・汗) つまり「俺様の企みに、まんまとひっかかりやがった!」的な笑みね。
そんな愉快な狛犬たちや、古い狛犬たちの多種多様な悪だくみの表情を、ぜひ鑑賞してみてください。
紅葉もきれいですよ♪