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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

紙魚子(しみこ)のおでかけのあれこれ、ユニークな家族、節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物などを書いています。

ドラマ『さよなら私』

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 今年のドラマのマイベストは、「これよ!これこれ!」と言いたい。すべての部分でクオリティが高過ぎる。文句のつけようがない。NHKドラマ10『さよなら私』

 理想的な専業主婦の友美とバリバリのキャリアウーマンで独身の薫は高校時代からの親友だが、実は友美の夫・洋介は薫と不倫していた。それが「神社の階段から転げ落ちたら、親友のカラダに自分の心が入って入れ替わった」だから、「あれ? 昔の名作ドラマのパクリ?」と一瞬笑うけど、観たら恐るべきドラマだった。親友なのに夫を寝取られているという状況だしね。それで入れ替わりだもん。

 その元ネタ「転校生」の主人公のひとりだった尾見としのりさんも、どーしよーもない男として登場(笑) 今回、彼は入れ替わらないけどね。

 もう受信料の元を取ってありあまるかもしれない。実は第3回目から見始めたけど、ぜんぜんオーケーだった。もうずるずると引き込まれてしまい、「さすが『泣くな、ハラちゃん』の作者、岡田惠和さんの脚本だ・・・」と、つくづく。この人は、ときどき奇跡的なドラマを書いてくださる。まさにドラマの「神」(毎回ではないけど、当たった時のクオリティはハンパない)

 「さよなら私」のHPで、岡田さんが「ドラマのみどころ」を書かれている。

「一つだけ変化球な設定のあるドラマですが、人がこれまでどう生きてきて、これからどう生きていくのか、どう人生を全うするのかを描いたドラマです。」

いやー、凝縮されていますねえ。

 夫婦とは?友情とは?母とは?母娘とは?愛とは?命とは?人生とは? 

 こういうのが、ぎゅう〜〜うっと入ってる。この「ドラマ10」枠でありがちな、「恋愛」とか「夫婦愛」とかで収まりきらない大きさがある。スケールが大きいのに、とても繊細な部分まで表現されているのも見どころ。

 製作統括が「あまちゃん」を担当された菓子浩さん。ロケ地の風景も、セットのハマり具合と作り込みの丁寧さも、ハイセンスとメタファーを示す衣装のなにげないステキさと工夫にも目を奪われる。

 第6回に、母・友美のはからいで、幼稚園をずる休みして母子水入らずで海辺で遊び、老舗旅館に泊まり、幼い息子に母・友美(心は友美)が重大な事実を話す海辺の美しいシーンは、親友・薫(心は友美)でなくとも、心打たれる。(どうでもいいことだが、旅館の浴衣もステキだった)

 俳優さんたちも申し分ない。難しい設定のドラマなのに、細かい表情や心の動きまで、とても繊細に演じてくださっている。特に主演の永作博美さんが素晴らしいが、彼女の親友たちも目が離せないくらいで、最近のお気に入りは「春子さん」。演じているのは佐藤仁美さん。最初は夫を愛しているいい奥さんだったんですよね。

 おしゃれで出来る二人の女友達(実は心が入れ替わっているけど、春子は知らない)のなか、唯一フツーの主婦であり母である「春子」さんも、どんどん存在感を増して来ている。前回見た第7回「女と男」は、「春子さん」ストーリーがど真ん中だった。爆笑しつつ、苦笑しつつ、涙なみだという感情のジェットコースター回だった。

 夫の浮気が発覚してから、わがままでいつも怒鳴り散らしていて、おばさん力を存分に発揮し、横柄で自己チューで不平不満でいっぱいになった春子さんが、暗に修復を図ろうと画策したり、相手の女性・冬子さんを観察したりして悩む中、ついに夫・光雄さんが離婚を切り出す。

 で、この夫たるや、(脚本家の岡田さんいはく)どうにも「しょーもない男」で、浮気しているのになんら緊張感がなく、ウキウキしてたりはしゃいだりしてるから、バレてしまう。浮気に甲斐性が必要なら、絶対浮気する器ではない男だ。

 演じるのは「あまちゃん」で、すごくいい人だけど「誰もがなんかイラっとくるお父さん」役の尾美としのりさんだ。もう、はまり役!!

 光雄さんは、やることなすこと裏目に出て、お小遣いも少なく、仕事ができる人でもなさそう。でもなんか憎めないんですよね。男性視聴者がみていたら「あるある」だらけのひともいるかも。「いや、俺はあそこまでダメじゃないし〜」とか思ってるかも(笑)

 その光雄さんが、やっとの思いで離婚を切り出したとき、妻への売り言葉に買い言葉で、光雄さんがついぽろっと「彼女の親友・友美の夫(つまり洋介さん)の不倫」をにおわせたあげく、妻に白状させられるという情けなさ。この行動が、その後彼に地獄をみせることになる。

 一方、彼が友美の夫である、完璧な男・洋介と会い、彼の妻が、夫が親友の恋人であることに理解を示すという、不思議な不倫関係に「なんかフランス映画みたいですね」と形容したあと、自分は「主人公がどんどんドツボにはまっていくコメディ映画が好き」というのだが、これがとんだ伏線に。

 なんとなくギクシャクした恋人・冬子さんとの関係を修復するため、光雄さんが彼女のバースデイを高級イタリアンレストランで素敵に祝うという、にんまりを隠せないサプライズ企画が、あろうことか、まさかの修羅場に。

 なんと、隣の席に妻が!?? あわあわしどおしの光雄さんが可笑し過ぎる!男性にとっては地獄の光景だろう。しかし、この地獄には、もっと底があった!!

 妻からの「自分と結婚したまさかの理由」を聞いた後、恋人からの「自分と恋人で居続けるまさかの理由」が!! それがもう、光雄さんが耳を塞ぎたくなるような理由なのだ。

 この状況で、妻も恋人も高級イタリアンを、競うようにばくばくと威勢良く食べて行くが、もちろん光雄さんはワインをがぶがぶ飲むのがやっとで、あまりのショックでクチもきけない模様。そしてこの回のタイトルは「女と男」(爆笑)

 修羅場が一段落したところで、照明が落とされ、冬子さんへのバースデイプレゼントの花火つきのケーキと、ハッピバースデイの音楽、そして会場からの拍手(春子さんからも・大汗)。

 岡田さんのラジオ番組でゲストで来た尾美さんが、「役とはいえ、あれはキツかったですよ・・・」とおっしゃっていたほどだ(笑)

 でも、気丈な振る舞いの春子の、親友たちの前でのホンネの涙と失意に、おもわずもらい泣き。彼女の子どもたちの、何気ないやさしさにも。

 スポットで入っていた、春子が高校時代に親友と、好きな男性のタイプや結婚や子どもについて話す「あの場所」での短い回想シーンが、またドラマを深いものにしていた。

 毎回、感動をありがとう。そして遊び心もそこここにあったりして。とっても深くて濃い、だけど爽やかで透明な風の吹くドラマです。あと2回しかないけど、おすすめ。

 重大なことを書き落とすとこだった。毎回挿入歌が流れると、ドラマのシーン的に涙も流れるという仕掛けになってます(笑) 挿入歌は Olivia Burrell(オリビア・バレール)さんの歌う「 Love is… 」で、たぶんこの曲が流れたら、条件反射的に涙が(笑)

2014年10月14日(火)スタート [連続9回] (あと2回観られます)

総合 毎週火曜・午後10時00分〜10時48分放送

予告編の動画は↓

http://www.youtube.com/watch?v=zmhD1YRUdJw