階段三昧
洋風建築で、もっとも興味深いのは階段だ。
今回は特に、手すりに注目。支柱のデザインや回り込んでいくときの作り込み、カーブのラインなど、見どころ満載だ。もちろんステップや踊り場の窓などのポイントも見逃せない。
ではまず、ファーストステップ。
手すりはこんな感じで始まる。支柱は算盤珠がつながっているような形だ。ドイツでモダニズムを学んだ本野さんこだわりのデザインなので、合理性や機能性を重視しているはずだ。つまり、強度や耐久性を重視した上でのデザインのはず。
もともと本野さんは建築家とともにデザイナーでもあったので、シンプルをベストとするモダニズム建築ではあきたらず、機能美や合理的なデザインを追求したのでは。
網代張りの凝った床からのファーストステップは、ゆったりとスペースを取っている。高さも他の段より緩やかにとってある。まだ登る勢いがついていない1段目は、人に優しい心遣いで上階へ誘うようだ。
折り返し回り込む部分では、踊り場でこそないものの45度の角度で1段を設けている。一般的な螺旋状の階段よりは、よほど優しい。ステップ部分の面積も大きい上、内側の回り込む部分もゆとりをもたせ、踏み外すキケンを最小限に計算されているかのようだ。
2階からみると、こんな風。回り込む2段の先にさらに直線で2、3段あり、そこから直角に回り込むため、今度は小さな踊り場がある。
窓からは、たっぷりと光が差し込んでいる。
2Fにたどり着いたところの、直角のカーブが美しい。
さらに美しいのが、直角のカーブに上に向かうひねりを加えた、傾斜するこの部分。
続く3Fへと階段は続く。
単なる裸電球なのに、やさしくなつかしいセピアの光。
3階で行き止まる手すりは、支柱のデザインが強調される。
これをみるとどうしても、「ねらいまして〜は〜」*という算盤の先生の声が空耳で聴こえる。小学生の頃かよった算盤教室のトラウマ?(笑)
磨りガラスとか曇りガラスって、いまでもありそうなのに、なぜか懐かしい気持ちになる。
* 算盤の読み上げ算を始める時の先生のかけ声は、実は「願いまして〜は〜」が正しいんだけど、私の記憶のなかでは「狙いまして〜は〜」でインプットされている。高学年になると山本リンダのヒット曲「狙い撃ち」が、先生の声と同時に脳内BGMとして流れるので気が散ってしまい、たいてい答えを間違えるのだ。というトラウマなのかも?