聴竹居 食堂&台所
居心地よく暮らすための細かな工夫は多彩にあるけれど、デザイン的にはシンプルシックな聴竹居の中で、ひときわ大胆で斬新な意匠が見られるのが「食堂」、ダイニングルームである。
どこがっていうのは、一目瞭然。下の写真は食堂から居間を見た所。入口と対角線に座れば、和洋どっちの居間にも目が届くらしい。
(パンフより)
居間との区切りにドアはなく、入り口に当たる部分には、半円の意匠。こんなの誰も思いつかない。一般住宅の出入り口に円形を使うなんて。しかもこの形は、入口の柱と真っ正面に向き合う形の場所に座ると、きれいな半円に見えるのだ。
少し段差があり食堂が居間より高くなっているので、私が住んだら何度も躓きそう(汗) お年寄りが住むとかバリアフリーという概念は、藤井さんにはなかったらしい。
でも壁の向こうは台所なので、壁の小さな扉をあけると、そこには台所と共有の棚があって、配膳がセルフサービスでできるシステムもある。ある意味、学食や社食のようでもある。配膳はお手伝いさんがするからそこに利便性を求めなくても、という発想はない。あ、でもモデルルームでもあるから、「奥様にも喜ばれますよ」というアイディアは必要かも。
同様に調味料の棚も台所とダイニングの共有になっており、醤油や胡椒がテーブルに出しっ放しにはなっていない。いかにも几帳面で、整理整頓好きそうな藤井さんらしい。
こんなレストランやカフェがあったら、ぜひ行ってみたい。どこかにありそうな気もする。でも長居しちゃいそうで、お店に取ってはちょっと不利かも(汗)
次いで台所に移動する。主婦の城でもあるので、興味津々で説明を聴く。
台所は清潔をむねとする場所なのでという理由から、オフホワイトで統一されている。木の部分は温かみのあるクリーム色がかった白に塗られ、タイルも白。壁の漆喰はそのまんまの冷たい白だ。
ただし床と天板は他の部屋と同様に濃い茶色だ。調理台の天板もしっかりとした厚みのある一枚板なので、いまでも使えそう。
シンクの隣には、ダストシュートも設置されている。これは主婦にはうれしい。うれしすぎる。
台所には収納場所がいっぱいある。下方、上方と収納場所だらけ。観音開きの扉、片扉、引き戸、何段もある引き出しと、これでもかというほどある。主婦が泣いて喜ぶ収納の数だ。むろん床下収納だってある。その辺は藤井さんも抜かりない。
上板の下にある引き出しの把っ手は、取っ手の部分がはみ出さないように計算されて上板を張り出してあるそうだ。さすが、こまかい!!
そして昭和の初期だというのに、電気冷蔵庫があったとか。当時のものなので、まだ冷凍機能はない。しかし、大山崎山荘を作った実業家の加賀正太郎ですら持っていなかったという、莫大なお値段のものだったらしい。どれくらいかというと、「聴竹居」一軒分と同じお値段だったとか。家一軒分じゃないよね、それ。聴竹居自体がカネに糸目をつけないで作ったものだから(汗) そりゃ戦後でも氷を入れて使う冷蔵庫だったから、とんでもないことだ。
巨大な配電盤のある2畳の小部屋が台所横にある。これは女中部屋でもあるのだが、この配電盤の操作係も一人やとっていたらしい。なんと聴竹居はオール電化の家でもあるのだ。
でも「聴竹居」のコンセプトを考えると、いまなら藤井さんは、自然エネルギーの自家発電装置の設置も考えそうな気がする。