外村宇兵衛邸
吉田兼好は、徒然草の中で「家のつくりようは夏をもって旨とすべし」と著している。「夏のしつらえ展」は、まさにいにしえからの知恵の集積である、和の生活空間の有り様を提示していた。
風が麻暖簾をくぐって畳を抜けて行き、なんともさわやか。古民家なので、家の中は少しばかり自然にひんやりとしている。
そして懐かしの蚊帳。思わず気持ちはお昼寝モードに。
面白い百面相の衝立があった。とはいえ、夜に見たらコワそう。
こちらも二階からお庭と路地が望める。
昔のお屋敷では、夏になると襖や障子を取り払って、部屋を広々とさせ、風が吹き抜ける道を作ったようだ。京都の旧家では、夏仕様で建具をよしずのものに替えるらしいし。
プライバシーを尊重して部屋を作ってきたけれど、夏は開放的に、オープンマインドにいく方がいいのかもしれない。
お庭の緑効果も抜群だ。目にも涼しく、実際樹々を通り抜ける風は、心持ちひんやり感がある。お庭を新たにつくるのは無理だけど、観葉植物をセレクトして、クールな演出くらいはできるかもしれない。苔玉とか、はかなげなシダ類の忍とかを吊るすのもいいかも。
木桶に水を張り、夏野菜を冷やす演出も、小憎らしかった。やはり夏に水を使う演出は効果的。これは現代でも応用できそうだ。
クロス類も、麻やちぢみやクレープ素材などを見ると、やはりすゞやかな気分になる。実は麻は大好きなので、家にもひとつだけ近江上布の暖簾がある。
「夏のしつらえ展」は、体感的(視覚、聴覚、感触)な涼しさを参考にできる大成功な企画だった。情緒的な和の夏対策とでもいおうか。おまけにレトロ感あふれる懐かしさだ。若い人たちには、逆に新鮮な魅力に満ちたものかもしれない。
目を皿のようにして見つめたり、貪欲に知識を吸収するのでなく、ぼーっとこの空間を体感する。それだけで充分満足できる、希有な企画展。いいです。