仏像の声がきこえる。
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またもや、れんくみさんと落ち合い、『MIHOミュージアム』へ行ってきた。
『神仏います近江』のついにラスト『天台仏教への道』だ。11日までだから、これもセーフで間に合う。釈迦の入滅から、大乗仏教への思想の深化が、最澄らによって天台仏教が確立されるまでが展示される。菩薩像、来迎図、薬師如来像、曼荼羅などを見た。
『MIHO』は公共の美術館ではなく、宗教法人のコレクションを一般公開されたものなので、建物から陳列までがベリーゴージャス。ゴージャスといっても、ケバさや成金趣味とは対極をなす、洗練された上品さと落ち着きに溢れている。それはスタッフの皆様も同様で、上品かつエレガント。非の打ち所がない施設だ。
メタリックな壁面で間接照明が荘厳なアプローチのトンネルも、入口付近で入館者を見下ろす松の木たちも、大理石らしき廊下も、超一流ホテルのようなレストルーム(とてもトイレなんて言葉は使えない!)も、シックで上品で落ち着いたミュージアムショップ(確かにおいそれと手が出ない物品も豊富だ)も、別世界で、ひとときセレブになった錯覚に陥る(笑)
それにしても、散見するMIHO所蔵の展示品は、おしなべて美の極致の名品ばかり。今更ながらだけど、持国天立像とか伎楽面 迦楼羅とか、おそるべき完成度だ。
けれど今回の私のベストトピックは、不思議な美しさに彩られた千手観音立像ではない。いやこれはこれで、本当にため息ものの仏像ではあったのだけど。(画像は図録より)
すごく美しいとか、見ているだけで感動するとかではない、至って個人的で主観的な体験だ。大津市の西教寺所蔵の薬師如来立像は、高校の部活のコーチや監督でこういう人いるよね、といった第1印象のご様子なんだけど。
このお方、途切れること無く、人間に語りかけておられたのだ。主観的にだけど、声がきこえていたから。内容は判然としないのだけど、一生懸命に人間に語りかけてくださる仏様って、めったにいらっしゃらないのでは。というか、初めての体験。あたりまえか。そういう体質ではないはずなんだけどな。たまたま、なにかがシンクロしたというか。
これは、いずれ比叡山ちかくだったと記憶している西教寺に行かねば。再会を求めて。いや、もうこんなことは無いかもしれない。というか、うん、きっとないだろうけど。
体育会系なビジュアルの饒舌な仏様との出会い。ミュージアムはときに不思議な邂逅を提供してくれる、粋な場所なのかも。