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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

紙魚子(しみこ)のおでかけのあれこれ、ユニークな家族、節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物などを書いています。

極楽への階段

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 すっかりくつろいでしまった方丈庭園を後にし、次は特別公開の三門へ。でも場所はどこ?

 甘酒の接待の前で、お檀家さんらしき方と立ち話をしているお坊様に「三門はどこですか?」と訊ねてみた。

 「ああ、あそこに紅白の幕が張ってあるやろ? あそこが受付になってるさかい、拝観料払って入れますよ。・・・そやけどな、階段がものすご急やし、くれぐれも落ちんように、気いつけてくださいや」

 「ええっ!? そんなに急な階段があるんですか?」

 ここだけの話、私は年々高い所に移動するのが苦手になってきている。子どものころ、ときどき階段から落ちたり、家の周りのちょっとした崖から何度か落ちたりした(4、5mくらいの高さで足から落ちたので青あざ程度で済んだ。もちろん親にはナイショだ)のと、母親が親戚の階段から転げ落ちて腰を悪くしたのを見た記憶が、トラウマとしてゆっくり芽を出したのかもしれない。

 お坊さんは真顔に「そや。こーんな急やでえ。もう、ほとんどハシゴやでえ」と、腕で45度くらいの角度をつくる。ちょっと悲壮な表情になった私をみて、となりのお檀家さんらしきおじさんが、「いやいや、そんなに急やないしな、大丈夫」ととりなしてくださった。

 しかしお坊さんは、「いや、ほんまに急なんやて。落ちんようにな。気いつけてな」と追い打ちを。

 それでも特別公開されている三門は、みたい! 紅白の幕に向かって急ぐ。

 拝観料を払い、履物を脱いで階段下へ。

 ・・・う〜ん。確かにハシゴに近い。お城の階段で、たまにこういうのがあるよね。急斜面で、しかも一段一段の距離が長い。巨人とまでは言わないが、身長2mかつ細身の人たちの国に来たような気がする。途中、踊り場があり、そこで上から降りてくる人が通り過ぎるのを待ってから、係の人の指示で登って行く。

 それでも「のぼり」は、まだいい。息を切らしながらでも「こわい」とは思わない。問題は「くだり」だ。こんな急斜面で下を見ながら降りるなんて、できるのだろうか? と既に心は帰りの心配を始めた。いや、できるかどうか、ではない。否応なく降りなければならないのだ。

 とはいえ、登りきって楼上内部に向かう回廊から見渡す眺めも、格別だ。帰りの心配は降りる直前にすればいい。

 楼上内部への入口には、暗室のような黒いカーテンに覆われ、これから映画会でも始まるかという薄暗さだったが、柱や天井に所狭しと描かれた天上世界の絵画は、年月による風化というスパイスを効かせて、神秘的な世界をくりひろげていたのだった。

 

 極楽浄土を表現した天井画は、なぜか♪エキゾチック・ジャパ〜ン♪という歌詞を喚起する。これも涅槃図同様、明兆こと兆殿司、それに弟子の寒殿司の手による作品。

 極楽に住むという半鳥半人。迦陵頻迦 ( かりょうびんが )といわれている。