極楽を堪能
堂内は半分に仕切られて、仏像などがある場所のみ、うすく照明が灯っている。そんな暗く冷たい本堂で、観光客の皆さんに説明してくださる係の女性のお話を聞く。それはなかなかに楽しい説明だったが、入ったときには、すでに半分以上終わっている模様で、ほどなく終了。
暗い堂内の釈迦如来様の真ん前に当たる壁際で、座禅のように胡座をかき、瞑想されている若い男性がいた。目を閉じて手は印を結んでいる。こんなざわめいた場所で瞑想できるなんて、たいへんな集中力だ。しかもここはまさに極楽浄土で、目前には宝冠釈迦如来像。なるほどこれなら瞑想のボルテージは高まるのかも。いや瞑想なしでも、ここが神秘的な空間であることは、皮膚から感じられる。
すでに説明をきかれた方はゆったりと退散されていくが、新たな観光客が三々五々入場される。まもなく堂内の説明が始まる。待ってました!
さて三門とは、禅宗で空門・無相門・無作門の三関門を象徴する三解脱門のことで、悟りに通じる三つの解脱の境地を表わす門(=三解脱門)との意味だそう。この1階にある三つの関門を抜けて、2階の極楽浄土に入れるということらしい。
三門は鎌倉時代に創建されたのだが、残念ながら焼失してしまい、室町時代に再建され、現存する禅宗寺院の三門では最大かつ最古のものだ。大屋根の四方の角柱は、豊臣秀吉が天正大地震(1586)による破損個所を大修理した時の柱で 「太閤柱(たいこうばしら)」と呼ばれているそうだ。
中央の須弥壇上に、宝冠釈迦如来像、脇侍の月蓋(げつかい)長者、善財童子像、十六羅漢像がお祀りしてある。宝冠釈迦如来とは、お釈迦様の悟りを開く前の姿で、彼は釈迦族の王子だったため、きらびやかなお姿で、髪も高く結ってある。まだ修行中なので他の如来像とは違い、岩場に座しておられるのだ。
堂内の羅漢さんや仏像を見たり、極楽にしか咲かないという白い花や、美しい声で歌うという迦陵頻迦( かりょうびんが )の天井画や柱の画にうっとりしたり。火災よけの龍や魔伽羅(まから)も描かれている。魔伽羅(まから)はインド由来の想像上の生き物であり、ワニと魚が合体したもので、シャチホコのご先祖さまらしい。
おおきな木造建築特有の厳しい冷気が足元を冷やしていく。それを見越して靴下を2枚重ね履きしたけれど、焼け石に水だった。足が冷たくなるのを我慢して、説明を聞く。なかなか興味深い説明を沢山聞けて、たいへん勉強になった。
あんなに心配した下り階段だったけど、なにしろ行列をついて降りるので、下を見ても段々は見えないから、ぜんぜん大丈夫(笑)
それとも極楽を垣間みたご利益だったのかも?!