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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

紙魚子(しみこ)のおでかけのあれこれ、ユニークな家族、節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物などを書いています。

日野町、浄光寺へ

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 人は「期間限定」に弱い。「特別公開」にも弱い。「京の冬の旅」という非公開文化財特別公開のツアーが毎年人気なのは、こういう人間心理のツボをガッチリ押さえたものだからだろう。

 そしてそれは、涅槃図にも当てはまる。お釈迦さまが入滅された旧暦の2月15日にあたる3月中旬の何日間か(寺院により異なり、期間も1日のみから1か月まで多岐にわたる)に限り公開される涅槃図。「期間限定」にも「特別公開」にも弱い私は、しっかり「涅槃図」の魔力(!?)に取り憑かれてしまった。

 「涅槃図」内には、さまざまなストーリーがあり、意味があり、作者自身の想いがあり、さまざまな楽しみ方がある。そしてなんと、地方色だってあるらしいことを、たまたま知ってしまった。

 江戸時代に大人気となった涅槃図は、意外に多くのお寺が持っているのかもしれない。知られていないことが多いけど、近江の寺院にだってあった。

 マイブームが涅槃図熱中人な私は、だから3月25日、休日のH氏に「どっか行きたいとこない? 連れて行ってあげる」と言われたとき、即座に「涅槃図/滋賀県」で検索をかけてみた。すると、こんな新聞記事が↓

「県有形文化財に12件新指定 日野町浄光寺の『八相涅槃図』など」

 (滋賀報知新聞 平成21年11月21日(土) 第15501号)

【紙本着色八相涅槃図(浄光寺)】八相涅槃図とは仏伝図の一種で、涅槃図の釈迦を中心に、生涯の主要な事績「誕生」「出家」など七つを描いたもの。浄光寺の涅槃図(江戸時代)は、日野町出身の絵師・高田敬輔(一六七四〜一七五五年)によるもので、ナマズ、コイなどの淡水魚も描かれオリジナルとして興味深い。

 行かなくちゃ、浄光寺! ナマズやコイの涅槃図、もしかしたら見られるかも。

 ネットでマップを確認して、即座に出発。恐ろしく寒い日で、日野からみた向こうの山には、うっすらと雪が↓

 恒例の「道に迷ったあげく墓地にたどり着く」というジンクスも健在ながら、細い道を折れながら、珍しい黄檗宗の寺院である浄光寺に到着。山門は、さながら竜宮城だ。(境内から見た門)

  境内には、墓石やお地蔵様や石仏がスキマ無くぎっしりとピラミッド型に積み上げられている。

  

 二階建てで、二重の屋根がついた、りっぱな鐘楼がある。

 田畑智子似の若奥様が、お堂の入口を開けてくださる。寒いのに、素朴でにこやかな対応に、心もほかほか。小さいけれど、充実したお堂。お寺に興味のないH氏も、なぜか気に入ったご様子。

 寺伝によると、僧行基の開基でご本尊の乳房薬師如来は一刀三礼の霊仏であるそう。

 行基さまか〜!! 古い!! でも乳房薬師如来って?

 十一面千手千眼観音菩薩立像という、聞いたこともないような不思議な仏像もいらっしゃった。

 十一面で、なおかつ千手!! とはいえ、これは理解できる。でも千眼って! 小振りで奥まった暗い場所にいらっしゃったので、十一面と千手は確認したけれど、千眼がちょっとわからなかった。

 布袋様(珍しい!!)のちいさなお守り付きおみくじを、二人で引く。お値段はお志。黄檗宗、太っ腹!! さすが布袋様をメインキャラクターとする宗派である。H氏、「大吉」が出ておおよろこび。私は「吉」。やっと凶を脱出したか?

 本堂の脇に、こんな魚がいた。

 調べてみると黄檗宗のお寺には、必ずいるらしい。木でつくられていて、口には真実の玉をくわえている。

 正式には開版(かいぱん)、また形から魚梆(ぎょほう)ともいうそうだ。木魚の原型ともいわれるもので、日常の行事や儀式のほか、朝夕の食事の刻限を告げるチャーミングな法具。あまりのチャーミングさに、H氏はひとめ惚れして、大ヨロコビ。

 もしかしたら、東福寺の三門にあった魔伽羅(まから)や龍のように、火を避ける意味から水を連想させる魚も、火災から本堂を守る願いの形なのかも。

 あ、そういえば、肝心の涅槃図だけど、これは大きすぎて出せないんです、とのこと。文化財に指定を受けたときに、ちょっと公開しただけだとか。気の毒そうに、田畑奥様が恐縮しておられた。お蔵に入った幻の涅槃図だったのだ。

 では、おいとまを。いろいろありがとうございました、と田畑奥様に挨拶すると、あ、ちょっと、と引き止められ、「もうお彼岸はすんでしまいましたけど、お彼岸の品です」と、お線香の小箱をいただいた。いかにも高級な箱で、花模様の透かしが入った薄紙につつまれている。しかもかなりいい香り。どうやら伽羅だ。(香道をたしなんでいる訳ではなく、箱にちゃんと書いてあった)

 せっかく、いろいろ楽しいもの、不思議なものをみたのに、すっかり記憶から蒸発している。ネットで調べても、マイナー寺院らしいので詳細はわからない。でも、楽しかったという記憶だけは残っている。いいところだったなあ、日野町の浄光寺。

 また隙をみて、図書館の郷土資料を調べて来なくちゃ。そして美術館か博物館に、「近江の涅槃図」展のリクエストをしなくっちゃ。