水を撒く。
最近は体調も良く、順調に畑に出ることが出来るようになった。
夕方のやや暑さが和らいだ時間帯に、水を撒いたり、野菜を収穫したり、虫がついていないか点検したり、結構な時間を費やすことに。
とくに水やり。日中のかんかん照りの日差しは、地面をもかんかんに干涸びさせるので、ハンパないほど水をあげる。
おじいちゃんが元気だった頃、「井戸を掘る」と言って、市内の業者さんに頼んで井戸を掘り、電気ポンプ式でくみ上げ、ホースで畑に撒けるようにしてくれた。おかげで大助かりだ。今は故人となったおじいちゃんに感謝。
飲み水にはならないので、畑に撒くためだけの水。夕方水を撒いていると、椰月美智子さんの小説、『しずかな日々』を思い出す。
昔風の家屋でひとり暮らしているおじいさんと生活を共にするようになる小学生の少年の物語。夏の夕方、おじいさんが庭木たちに水を撒くシーンがとても素敵だった。
たちこめる水の匂い、ぬれる緑と葉につく雫、黒く染まる地面、ほっとするようなやさしいひんやり感。
そんな本の中にあった情景が甦る。ついでに、子どもたちに大人気だった、おじいさんのつけたお漬け物も食べたくなる。
冷蔵庫にあるぬか漬けに、キュウリを追加しなくちゃ、人参もいれてみようか、などと、小説のおじいさんには及びもつかないが、自家製のぬか漬けが食べたくなる。
本の中の世界と現実がクロスするひとときは、ぼんやりと、のんびりと、贅沢に過ごす時間だ。