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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

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石山寺縁起絵巻

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 昨日は滋賀県立美術館で開催中の「石山寺縁起絵巻の全貌」を見に行った。あまりにも石山寺およびこの絵巻については全く知らないので、基礎知識を押さえておこうという、まれにみる殊勝な心で出かけてみた。

 いや、行ってよかった。江戸時代の人たちがお伊勢詣りをするように、草木が佐渡へとなびくように、中世の人々は、石山寺の観音様にお祈りして願いを叶えてもらっているのだ。ということが理解出来た。着色した絵の具もきれいに残っている。

 またこれは同一絵師もしくは同一絵師集団らが一気に描いたものではなく、鎌倉時代から江戸時代にかけて、480年の歳月を経て書き継がれたリレー絵巻なのだった。

 内容も、石山寺の建立時に良弁が比良明神の託宣を受ける逸話や、紫式部が寺から湖水に映る月を眺め源氏物語の構想を得たとされる場面、「更級日記」の作者・菅原孝標女や「蜻蛉日記」の作者、藤原道綱母など、古典の教科書の有名どころも出てくるので、なんだかわくわくする。

 おまけに滋賀県最古の仏像とか、インドや朝鮮半島を思わせる造りの古い仏像なども見ることができた。銅鐸や古瓦(白鳳時代!!)とかもね。

 いまやすっかり全国区で有名になってしまった大津市。そこにある西国巡礼十三番札所で紫式部ゆかりの古刹・石山寺(いしやまでら)の草創と本尊の霊験譚を描いたのが、重要文化財石山寺縁起絵巻だ。これはアートとしてだけでなく、生活史、あるいは交通史など、当時を伝える宝庫の資料なのだ。

 今回の展覧会は、重要文化財本七巻を全巻一挙に公開する初の試みで、現在実施中の「模本」などの資料調査研究の途中報告として、各種の模本や関連資料も公開している。

 絵巻展示は2段に分かれている。下段には鑑賞者から近い斜面台の上に、絵巻の実物がすっかり広げられた状態で展示されている。上段にはその複製図版と詞書(ことばがき)の読み下し文・意訳が展示されている。私のような素人衆には大助かりだ。

 個人的には、一人一人の表情がゆたかで楽しい1〜2巻がお気に入りだ。貴族の行列でも下っ端のひとたちが、あくびをしたり、となりの人とおしゃべりしたり、仕事のやる気のなさが溢れている所なんか、今も昔も人間のやることは一緒、と可笑しくなる。

 それから模本で着色前の下書きに、色指定がしてあるのを見たり、同一人物を時間軸に沿った動きで並列に描くことで、時間経過を示す絵巻独特の手法も、絵巻がマンガであることを再認識できた。そうそう、槍を振り回しているときの残像モノトーンで円形になった分身の術みたいな槍の表現なんて、まんまマンガだし。千年の歴史が日本のマンガにはあるんだもの、そりゃ洗練されているはずだ。

 ということはダンスと歌が一体化している今様は、さしずめヒップホップになるのか。絵巻がマンガだとすれば、後白河さんは、ヒップホップ狂いでマンガマニアの権力者ということになる。でも麻生さんとだけは一緒にしないでほしい。

 この展覧会は11月25日まで(絵巻全巻公開は10月6〜14日と11月13〜25日)。950円。ギリギリ3桁金額でみられます。