幸いなるかな、ローカル紙読者!
木之本ツアーの途中ですが、インフォを兼ねて「山口晃展」レポートを入れさせていただきます。
昨日、えき美術館で開催中の『平等院養林庵書院 襖絵奉納記念 山口 晃展〜山口晃と申します 老若男女ご覧あれ〜』に行って来た。
前日までそんなつもりはなかったけど、最終日から逆算すると、どうも行けるかどうかが怪しいことに気づいたので、出かける2時間前に、いつもの「ひとり会議」で急遽決定したのだ。急遽、なので、せっかく京都まで行くけど、これのみとした。
結論からいえば、いや〜行ってよかった。予想通りに、いやいや予想を上回る面白さだったのだ。そう、「面白さ」。こんなに笑える展覧会って、ないと思う。
おまけにこの日の決断は大正解で、人も少なく、親切にも大画面の拡大パネルが用意されていて、じっくりとみることが出来た。
山口晃ファンにはお馴染みの「洛中洛外図」で、随所にちりばめられた絵で描くオヤジギャグに、クスクス。画面左上にあった鳥獣戯画の脱力感たるや、もう〜!
↑東山のあたり。八坂神社とかインクライン(レンガの陸橋)とか動物園がみえる。動物は、白象と狛犬と鳳凰!
↑哲学の道から銀閣寺にかけて。真如堂(しんにょう堂)もちらっと。
↑ここは見どころ! 廬山寺、冷泉家、俵屋旅館、同志社大学、紫野、清明神社などなどが絵解きになっています。でも小さ過ぎる!
↑京都駅なので、新幹線もあったりして。京都タワーもね。
三越の閉店売りつくしセールの絵の、物語溢れる場面場面にぞっこん。
電柱デコラティブな絵も、奇想に溢れ楽しい。
大画面なのに、コメツブに文字を書くような細密画なので、そしてまさにそこに面白いことが隠されているので、老眼鏡を取り出して画面を凝視しなければならない。見る方も笑いに貪欲なガッツが必要なのだ。
↑ベルトコンベア方式で、千手観音の千躰仏製作をする作業所!!こんなこと思いつくのは、山口晃だけよ(笑)
ところで今回の白眉は全国44紙のローカル新聞に連載された、五木寛之の新聞小説「親鸞」の挿絵!!
だれや、五木寛之が、しかも「親鸞」で山口晃とコラボなんて企画したのは!!という段階で、もう爆笑必須!
私は全然知らなかったので、「知っていたら、京都新聞に変えてでも読みたかった(いや、見たかった!!)」と ものすごく残念だった。
あの真面目な五木寛之の小説を、しかも超真面目な「親鸞」という宗教小説をむこうに廻し、いつも以上にテクニックとアイディアを絞る山口さんの挿絵に爆笑の連続!!
真面目な五木ファンとか、門徒の皆様への配慮とかは、問答無用とばかりにバッサリ! なんといさぎよい! 山口晃、サムライ魂を持っていたのね。
すごいわ〜! すごいわ〜!! と次々にくりだされるアイディアに爆笑につぐ爆笑。あっさりと圧倒されてしまう。
普通の新聞小説の挿絵らしい、ありふれたペン描きあり。
「バカボンド」の井上さんみたいな緻密なデッサンの鉛筆描きあり。
さいごに「みつを」と入れたいような筆書きあり。言葉は「きょうがいちばんしあわせ(顔文字スマイル付き!) 」。
パステルに彩色した少女マンガの扉絵風あり。
「しりあがり寿」風な、おちゃめなマンガタッチなどなど、さまざまなテクニックを駆使されている。
「尻が落ち着かない」という言葉の横に、正座する目(目玉オヤジ状態)鼻(目と同様)などをきっちりと描き、後ろで尻(単独に手足つき)がおどっていたりするような、言葉遊びを絵にしたものもいくつか。
『親鸞』で、こんなことして、いいのか、いいのか〜(笑)
なかでも笑ったのこれ↓
作詞・作曲・うた めぐみのぶこ
『もう迷わない』
♪あなた追いかけて 遠くまできた
夢と私 どっちが大切なの
ゆれる心 でも
足手まといはいや
(・・・以下略)
歌謡曲の歌詞か? それより「めぐみのぶこ」って・・・親鸞の妻、恵信尼やんか〜! この歌詞カードが挿絵になっているのだ!しかも小説ともすばらしくマッチしているから、よけいに面白過ぎる。
そういえば彼ら(親鸞と恵信尼!)が結婚した時の挿絵は、なんと「結婚しました♡」お知らせハガキだった〜〜!! 「お近くにおこしの際にはお立ち寄りください」という、あれです。
負けました。わたし、まけましたわ。思わず回文がでるくらいの敗北感(笑)
小説はなくてもいいから(おっと!)、解説とさし絵だけの「親鸞」がほしい!!と切実に思ったけど、残念ながら展覧会の図録はないので、絵葉書とクリアファイルとカレンダーを買い、そそくさと帰る。
行きに帰りのバスチェックを怠ったため、最寄りの駅に着いたときには、1時間半バスがなかった。仕方なく40分かけて痛い足をひきずりつつ徒歩で家まで帰ったが、なにしろ山口晃作品を見た後のテンションなので、心は晴天。
これは見ないとだめよ! 12月2日まで。会期中無休。ジェイアール京都伊勢丹7F「えき美術館」へ急げ! この世の憂さが、快晴になります。