真剣!ドールハウス
「ブルーメの丘 光と風の美術館」で開催中のドールハウス展。切れ目なくみえるお客さんたちの心をかっさらう、本物の迫力と圧倒的な吸引力で、展示室は「いいものをみました!」という幸せな空気で満ちていた。
入口近くのトップバッッターは、二階建てプラス憧れの屋根裏部屋付きというアメリカンタイプで、屋根や壁はオープンになっている力作だ。ここでまず、歓声があがる。
夢いっぱいのパステルカラーな子供服ショップ。私は思わず、神戸の「ファミリア」に迷い込んだときのうっとり感を思い出してしまった。
完璧な世界観だ。
寒い日に転がり込んで、ほっとする場所だ。
ドールハウスのイメージを覆す、渋い和のお家だってある。
露天風呂には新しいきれいなお湯が流れ込み、まっさらの手桶や椅子からは、檜の香りが漂って来そうだ。お風呂の底には、波の影が揺れている手の込み様! 日常の観察力が、ミニチュア世界にリアリティを肉付けしている。
まさかドールハウスという乙女チックな響きに、一升瓶が登場するとは(笑) ラベルは「大吟醸 大竹」! この手の和ドールハウスを熱心にみておられた年配の愉快で気さくな男性が「一升瓶がうれしいねえ!」と、楽しげに語りかけてくださった。
和のハウスは、「着物の洗い張り」などの昔懐かしい小道具などもあり、年配の方の心を鷲掴みにしていたようだ。
手芸店のロマンチックな統一感と、ハサミや針に至るまでの小さな小物が、収まるべきところにぴったり収まるセンスに、ただただ脱帽する。
ピアノとハープのある音楽室。ロマンチックな洋館の扉。ソファーの柔らかな質感で、空間が大物で占められているにも関わらず、圧迫感が緩和されている。照明がなんとも美しい。
インド料理店というタイトルに、深く頷いてしまうインテリアと色合いだ。
たぶん、カレー色のテーブルクロスのせいだ(笑) なんだかカレーが食べたくなる。
昭和レトロな皐月の時間が、凍結されたかのような空間だ。
お座敷の床の間には5月人形の兜が飾られ、菖蒲も生けてある。卓には紙のカブトも。
居間には懐かしい型のテレビや黒電話、昭和40年代にはよく見かけた、縁にヒダヒダをとった白い座布団カバーなんて、涙出そうに懐かしい〜。
ドールハウスに必須なのは丁寧な仕事ぶりや、神経のゆきとどいた清潔感だけではない。作り手のイメージする確固とした世界観、日常の観察力と想像力がいかに必要かを思い知らされた。そしてもちろん理想を求める夢見る力も。
ところで、展示室の一番人気は、なんと! 寂しくないようディスプレイ用に置かれた、優しい館長の私物「オズの魔法使い」の飛び出す絵本!! その場所では、かならず歓声やテンションの高いおしゃべりが聞こえ、その滞在時間も展示物見るより長い場合も。 こちらはやさしくゆっくり扱っていただければ、ページをめくって読むことも可です。まさかの想定外でした。