大雲院☆祇園閣
ミストを浴びて人心地ついたら、大雲院の本堂に。信長父子を弔う為の寺院で関ヶ原の合戦より前の創建だが、近年建て替えられたのか、えらくきれい。新興宗教の寺院のような雰囲気だ。
椅子がならぶキレイな本堂で、30名ほどのオバちゃまたちとそのうちの一人の伴侶である(らしい)男性1名は、ボランティアガイドさんの説明を聴くことになる。ほどなく睡魔が忍び寄って来た。睡魔との熾烈な戦いに忙しく、せっかくの説明も馬耳東風だ。またこういう時に限って、なかなかお話は終わらない。
帰宅してから大雲院や祇園閣に付いて調べたら、実は面白いエピソードなんかもあるのに、なぜか面白くない部分を選んで説明してくださったらしい。
たとえば富岡鉄斎や石川五右衛門のお墓があるとか、建築家の伊東忠太は妖怪好きだったとか、ヨーロッパでなくアジアに留学し、インドやトルコを旅したとか。京都には金閣や銀閣があるのに銅閣がないということから、祇園閣の屋根を銅板葺きにして「銅閣寺」を作ったとか。
今にして思えば、祇園閣の展望から見下ろした寺院の墓地には、古びて茶色くなった墓石もあったっけ。祇園閣には丸い照明を抱え持つ怪物の意匠もあった。ノートルダム寺院についた不気味な意匠の東洋版である。
長い説明が終わったとたん、不思議に睡魔は霧散した。祇園閣へ移動する。
祇園閣は昭和3年に建てられた鉄筋コンクリートの3階建て。大倉財閥の創始者、大倉喜八郎の別邸として作られた。入口には狛犬のような巨大なライオンが、鼻の下を伸ばして歓迎してくれているよう。石垣は近くで見ると、コンクリートに石の模様をプリントしたかのような平板さだ。よほど緻密な仕事かフェイクかどちらかみたいだね、とれんくみさんと語り合う。
展望に続く階段は、天井も壁も仏教教典を元にした壁画で覆い尽くされている。これは敦煌莫高窟の壁画を模しているものなので、エキゾチックな色合いと絵柄だ。シルクロード風エキゾチックに、丸い照明を抱え持つ、ややゴシックな怪物がコラボする、不思議な空間だった。
圧巻はやはり京都の四方を見渡せる展望階。白く巨大な霊山観音や八坂の塔が、京都のはんなりした風情を醸し出す。青紅葉の枝が重なり合って広がるのも美しい。
残念ながら撮影禁止なので写真はないが、ここの特別公開は5年ぶりだとか。そういえば今年のお正月、大谷本廟の参道で初めてその存在に気づき、行ってみたいものだと思っていたっけ。まさか、その半年後に内部にもぐりこむことができるとは、その時には夢にも思っていなかった。忘れていても、夢?は叶うこともあるのだ。
最後に宝物館で、信長父子の肖像画や富岡鉄斎、円山応挙の絵画、素敵な茶器や茶釜などをじっくりと拝見した。じっくり見ていたので、2/3くらいのところで残念ながら時間切れ。それでも茶釜のひとつには、こっそりと小さく蜘蛛の形が打ち出してあったりして、お茶目な意匠をみることができた。