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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

紙魚子(しみこ)のおでかけのあれこれ、ユニークな家族、節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物などを書いています。

さよなら 海文堂書店。

以前の記事「紙魚子の小部屋」は下のリンク集から読めます。

 この書店は、今年の9月に99年の歴史を閉じる、神戸の有名な個性派書店だ。

 HPを読むと、閉店を決めるまでに、やれることはとことんやり、努力を尽くされたことがわかる。手をこまねいて閉店を招いた訳では無いのだ。

 画期的なのは、古本専門店が店内にいくつか入っていること。店頭も古本屋さんだ。

 

 写真はないが、1Fにも2Fにも結構なスペースの古本コーナーがある。スペース間借りしてちょろっと、というケチ臭いものでなく、アクも嗜好も全開にババーン!と、それぞれの古書店独自の体臭を放っていた。まさに店舗内クロスオーバー。

 これが店舗内の古書店で買ったもの↑

 売り場面積も、丁度いいかんじ。一巡して、満足するが疲れない。雑誌もみたことのないものや、BNも見やすく置いてある。ただし、あと1週間で閉店なので、当然平積み部分や雑誌架に空白がある。新聞書評にあった『グローブ・トロッター』みたいなマニアックな本が、面出しされている。

 2Fは主に海事関連書やマリングッズが販売されている。海に関するものがどこまでも。船舶のペーパークラフトから海のいきものまで。潮風の匂いがしてきそうで、とてもカッコイイ。中学生の頃、私が男子で泳ぎが得意なら、商船学校に進学したかったことを思い出した。ポスターがカッコ良かったのだ。私はそんなものに釣られるような、浅はかで向こう見ずな子どもだったのだ。女子でよかったかも。

 マリングッズは、ものによってはずいぶん品薄、または完売状態だった。そりゃそうだ。むしろ閉店カウントダウンの時期に、それだけ売り切っていることを喜ばなければ。私は船舶職員の袖についている階級章、それにたくさんの信号旗の絵葉書を購入。事務員さんにも階級章があるんだ。

 現役なのに伝説のように伝え聞いていた「海文堂書店」には、かねがね興味があって、ついでがあれば行ってみようと思っていたが、まさかこんな形で訪問する事になるとは。

 

 これが海文堂書店で買ったもの↑

 いきつけの本屋さんがなくなるのは、大なり小なり何度も経験済みなので、はじめて伺う海文堂なら、さほどショックではないと思っていた。ところがこの書店は、忘れていた本屋の役割というものを、しっかり突きつけてくれた。

 いま、世界はどうなっているのか。日本にはどんな問題があるのか。それをどうやって建て直せばいいのかというベクトルを見せてくれる。フロアを歩いていると、そういうことがなにがしか、簡潔にまとめられて見えてくる。そしてどんな本を売りたいのか、この本屋はどういうものが好きなのかを、バシッと見せてくれる。本好きのツボをちゃんと押さえてくれる。棚の流れに引き込まれる。大事なことが、わかりやすく小気味よく教えてもらえる場所だった。

 なるほど、閉店が決まった後、シャッターを叩いて号泣するファンがいるはずだ。閉店後は、どんなに寂しいだろう。海文堂に替わる店はないだろうから。

 最後だからとスタッフ自身が好きな本を並べたコーナーがある。「さよなら」「さようなら」という言葉がタイトルに入った本のコーナーにはぐっときた。

 たとえ閉店しても、神戸っ子の記憶の棚にいつまでも残り、伝説となって語り継がれる本屋であることは間違いない。最後の最後に行く事が出来てよかった。さようなら、海文堂書店

 写真集『海文堂書店の8月7日と8月17日』(夏葉社)↓

 ☆海文堂書店HPより☆ ↑

 2013年8月7日と8月17日。夏葉社代表・島田潤一郎さんとプロカメラマン・キッチンミノルさんがご来店くださり、当店のすべての棚とスタッフを撮影していただきました。元町の「町の本屋」の1日。働く者たち。その棚。

幕を閉じる海文堂書店の最後の姿が記録されています。