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紙魚子の小部屋 パート2 plus はてな版 (2009年9月〜)

平凡な主婦の日常と非日常なおでかけ記録、テレビやラジオや読書の感想文、家族のスクープなどを書いています。

紙魚子(しみこ)のおでかけのあれこれ、ユニークな家族、節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物などを書いています。

笑う仏像展

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以前、3月にある涅槃会(ねはんえ)に公開される「涅槃図めぐり」を、れんくみさんとしたことがある。「めぐり」といっても「東福寺」と「泉涌寺」の巨大な2幅だが。その後すっかり涅槃図に見入られた私は、「本法寺」へ長谷川等伯・筆の涅槃図を見た後、「真如堂」の涅槃図も見に行くという「おひとりさまツアー」も敢行した。どの涅槃図も巨大で精緻で生き物達がいっぱいの見応えのあるものだった。それだけみたら、いっぱしの「涅槃図」ツウにもなろうというものだ(笑) 

 ということで、会場にあった常念寺の「仏涅槃図」(鎌倉時代13〜14世紀)も、じっくりと見せていただいた。どんな生き物が描かれているかというのが、涅槃図の醍醐味なのである。白象、駱駝、蛇・・・そして白象の近くにムカデまでも! ところが後ほど見る事になる酬恩庵の「仏涅槃図」(南北朝時代14世紀)にも、やはり白象の近くでムカデが、ブッダの死を嘆き悲しんでいた。涅槃図にムカデは、お約束なのか? 今後の課題である。

 ところで今回の私の中で、見たい仏像のメイン・ナンバー1は、この方である。

 寿宝寺の千手観音立像(平安時代)。当然のように重文だが、国宝でもおかしくないようなステキ仏。千手といっても愚直に千本ある仏様はめったにないけれど、これがまさにそんなレアものの、正真正銘の千手観音様だ。つくる手が千本もあれば、仕事も雑になりがちだと思われるのに、手の表情もゆたかに表現されている。お顔も「なんせ千本手があるから、ヨユ〜で救いまっせ〜」というようなおおらかさとゆったり感がある。

 調べてみたら愚直なレア千手は、大阪の葛井寺(なんと昨年見ました!)、奈良の唐招提寺にもあるそうで、この三つは千手観音三大傑作とされているそうだ。

 寿宝寺はその他にも異形仏の宝庫で、降三世明王立像(平安時代12世紀)や金剛夜叉明王立像が、複数の腕をアクティブに四方に動かしていた(イメージ)。

 個人的には、お手手のたくさんある仏さまって好きなんです。寿宝寺の仏様達にうっとりしたあとに、見た事の無いお方に出会う。6本の腕を持つ神童寺の愛染明王さま(平安時代12世紀/重文)だ。

 愛染明王の弓は、普通、左右真ん中の腕で弓と矢を持っているものが一般的なものらしい。ところがこのお方は、上の手で上に向けて、矢を射るしぐさまでしていらっしゃる。こういう愛染明王を「天弓愛染」というそうだ。重文指定の「天弓愛染」は全国でも、高野山金剛峯寺、山梨の放光寺、そしてこの神童寺の三躰のみ。

 千手観音に続いて「天弓愛染」も日本三大仏だったとは。「マツコ&有吉の怒り新党」の名物コーナー「新・3大〇〇調査会」に応募したいところだ。(・・・って、とっくに3本の指に収まってるって)

 そして他にも神童寺に所蔵されている仏様たちは、実は私たちのツボにハマった。まずいきなり、このお方とご対面したときには、そのあまりの顔の造りの中央寄り具合に、笑いを噛み殺す事ができなかった。 

 不動明王立像(平安時代 12世紀)といえば、マッチョで怒りの表情をイメージするのだが、このお方は、マッチョというよりは「ぽっちゃり」、怒りというより「ドヤ顔」に近い。怖いというより微笑ましい。というか可笑しい。実物はこんなもん(絵葉書)じゃないです。声を殺してノンストップに笑ってしまいましたよ。

 そして不動明王様のお近くにいらっしゃったこの方々も、私たちを笑いの坩堝に落とし込んでしまった。

 右から日光・月光菩薩さまです。

 見た人それぞれの思惑があるのだけど、私は月光菩薩さまの、スナフキンみたいな眼にヤラレました。

 ともに平安時代の作だけど、日光さんが10世紀、月光さんが12世紀と、別々につくられたもの。セットの作品ではない。それをどういうわけか後年コンビを組まれて、のほほんとした楽しい空気を醸し出してくださることになった。凄腕のコーディネーターがいたものである。

 「笠置寺縁起絵巻」(3巻/室町時代15世紀 /笠置寺)について記しておくのを忘れていた。奈良絵のように素朴で、カワイイ系の絵巻だ。奈良絵本に通じるものかもしれない。巻上の展示はすでに終わっていて、私たちが見たのは「巻中」の部分。これは6月1日まで。巻下は6月3日〜15日の期間に見られるそうだ。

 この後には一休宗純和尚の貴重な遺品や直筆の文章など、一休マニア(いるのか?)垂涎の展示があった。私は坂口尚の漫画「あっかんべえ一休」で、一応彼の生涯はアバウトに把握しているので、なかなか興味深かった。

 しかし玄人はだしの腕だったという愛用の尺八のキャプションには、度肝をぬかれる。彼の趣味が羅列してあったのだ。遊女、男色、尺八。さすが風狂の僧だ。

 ついでながら一休宗純和尚と浄土真宗蓮如上人とのエピソードを(歴史秘話ヒストリア風に)。

 親交のあった本願寺門主蓮如の留守中に居室に上がりこみ、蓮如の持念仏の阿弥陀如来像を枕に昼寝をした。その時に帰宅した蓮如は「俺の商売道具に何をする」と言って、ふたりで大笑いしたという。

Weblio辞書「一休宗純」より→http://www.weblio.jp/wkpja/content/%E4%B8%80%E4%BC%91%E5%AE%97%E7%B4%94_%E4%B8%80%E4%BC%91%E5%AE%97%E7%B4%94%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81