「用の美」に酔う。
受付までの細長い三和土を歩き、すのこが置かれた上がり口の受付で入館料900円を支払い、館内写真撮影の許可を得て(住所氏名をノートに記入するだけ)、1階の生活空間に佇む。
囲炉裏が四角く切ってあるが、いい具合に段差をつけて、座れるようにもなっている。立ち座りが大変になる高齢者には、ありがたい仕様だ。
(きっと)こだわりの鉄瓶の上に垂れ下がった餅花は、本物の餅が付いていた。餅花とは、正月や小正月に、一年の五穀豊穣を祈願するものだそう。また、さりげなく置かれた河井寛次郎の作品が贅沢だ。
真鍮のストーブ? としたら、カッコよすぎる。というか、宮崎駿の世界みたいだ。テーブルの上の丸いものは、お鍋のようだった。冬はここで二人鍋がつつけるのだろうか?
注連縄などもあちこちにかかり、注意深く神様を祀っている様子は、ちょっとした民俗館のようでもある。
調度や置き物のひとつひとつが場に馴染み、時間がゆるやかに流れている。
中庭の光溢れる緑を背景に、テーブルの花が微笑んでいるかのよう。
ちょっとした意匠なのに、障子が心憎いようなデザインになっている。シンプルだから掃除もしやすい。
中庭が日本庭園でなく、小石が敷かれているだけなのは、裏手の登り窯で焼き上がった作品を並べる為だろうか。それでも端に連なるこんもりした緑が、眼にやさしい。しかも典型的な日本家屋なのに、とても明るい。
使い込まれた椅子は、座る面がおしりの形に凹みが作ってある。民藝運動の一員であったバーナード・リーチ氏より贈られたもの。
れんくみさんが「ヴォーリスさんの建築を和にしたような」と感じられたのは、この家も、きっと住む人がどれだけ居心地よく、毎日の生活が楽しく機能的であるように考え抜かれたものだからだろう。まさに「用の美」。
次は、階段箪笥を登って2階へ。